岸田文雄首相の後継を決める自民党総裁選には、過去最多の9人が出馬した。27日に投開票が行われ、1回目の投票ではいずれの候補者も過半数に届かず、決選投票の結果、石破氏が第1回投票でトップだった高市早苗経済安全保障担当相(63)を逆転で破り、第28代総裁に選出された。石破氏は5回目の総裁選挑戦で、総裁の座をつかんだ。10月1日に召集される臨時国会で第102代首相に指名される。
石破氏は27日夕、記者会見し「岸田前総裁が、いろいろな自民党をめぐる問題を受け自ら身を引くという決断をして、こういう形の総裁選になった。党の同志と共に、岸田前総裁の気持ちに報いるように全身全霊を尽くしていきたい」と述べた。また、注目される、衆議院の解散・総選挙については「野党の方々とも論戦を交わした上でご判断をいただきたい。しかしながら、なるべく早く審判をたまわらなくてはならない。その2つを合わせて適切な時期を判断したい」と述べ、野党と国会での論戦を行った上で踏み切る考えを示した。その後の報道では、10月15日公示、27日投開票の日程を軸に調整に入ったと伝えられている。
新総裁に石破氏が選出されたニュースは、韓国メディアもこぞって伝えた。公共放送のKBSは選挙結果を詳細に報じた上で、石破新総裁について「自民党内では右翼性向の議員とは異なる『ハト派』的な歴史認識を示してきた点が特徴的で、太平洋戦争のA級戦犯を合祀している靖国神社への参拝に対しても否定的な考えを示している」と伝えた。また、「韓日関係が悪化した時にも、関係改善に積極的な意志を示してきた」とした上で「このため、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領と岸田首相の間で大きく改善した韓日関係が、少なくとも両国間の歴史問題のために悪化することはないとの見方が出ている」と報じた。
また、東亜日報は「保守強硬派だった安倍氏(安倍晋三元首相)と対立し、非主流派だった石破氏は、自民党の有力政治家の中で韓日関係に比較的前向きと評価されてきた」とし、「靖国神社参拝を公言した右翼性向の高市氏と比べると、穏健派だ」と紹介した。
ハンギョレは、石破氏が過去に、歴史問題について「わが国が敗戦後、戦争責任と正面から向き合ってこなかったことが多くの問題の根底にある」と発言したことなどを紹介し、「自民党の政治家の中では(問題に)前向きな方だ」と紹介した一方、元徴用工訴訟問題での大法院(最高裁)が日本企業に賠償を命じた判決は国際法違反だと考えていることや、韓国が実効支配している島根県の竹島(韓国名・独島)の領有権を主張していると指摘。与党・自民党の保守政治家であることに警戒感を示した。また、「防衛相を務めた石破氏が主張する安全保障政策自体も、タカ派的な部分がある」とも指摘した。
日本で事実上の次期首相が決まったことに、韓国外交部(外務省に相当)の当局者は、「新たに発足する日本の内閣と緊密にコミュニケーションを取りながら、韓日関係の前向きな流れを継続するため引き続き協力する」と表明した。また、「両国は自由、人権、法治の価値を共有し、安全保障、経済、グローバルアジェンダで共同の利益を追求する最も近い隣国であり、協力パートナーだ」とした上で、「両国が前向きな姿勢で未来志向の関係発展に向けて共に努力することを期待する」と述べた。
28、29日には日韓の交流イベント「日韓交流おまつり」が東京・世田谷区の駒沢オリンピック公園で開かれたが、会場であいさつしたパク・チョルヒ駐日大使は石破氏が自民党新総裁に選出されたことに触れ「岸田首相が成し遂げた関係改善の成果を、引き続き力強く継承してほしい」と語った。
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