性的なディープフェイクは、秘匿性が高い通信アプリ「テレグラム」を通じて拡散しており、韓国社会に衝撃を与えている。韓国でのディープフェイク性犯罪は、統計を取り始めた2021年は156件だったが、今年は7月までに既に297件に達した。5月にはソウル大学の卒業生らが、卒業アルバムやSNSに掲載された同窓生の写真を基にディープフェイクわいせつ動画を作り、テレグラムのチャットルームを通じて拡散させる事件が発生。生成AIなどによる偽画像を流通させる行為は法律で禁じられており、今年はこれまでに178人が立件された。被害者の多くは未成年で、加害者もまた10代が7割を占めた。
テレグラム上に、性的な偽画像などを共有するチャットルームが多数存在する実態を韓国の各メディアが8月下旬以降、相次いで報じたことで、この問題が注目を集めることとなった。海外メディアも報じ、英紙のガーディアンは当時「韓国が、急増するディープフェイク性犯罪と戦っている」と伝えた。
ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は8月、「最近、不特定多数の個人を標的としたディープフェイク動画が、ソーシャルメディアを通じて急速に拡散している」と問題視し、警察当局に対し、このようなデジタル犯罪を徹底的に捜査し、撲滅するよう指示した。
韓国では、通信アプリでの性被害をめぐり、2020年に法改正を行ったが歯止めがかからず、厳罰化を求める声が高まる中、更なる対策の強化に着手。国会は先月26日、性的なディープフェイク画像であることを知りながらこれを所持したり見たりしたりした場合、3年以下の懲役、または3000万ウォン(約327万円)以下の罰金を科すとする通称「ディープフェイク性犯罪法」を可決した、また同法案は、これまで処罰の対象だった作製した罪について、現行の最大5年以下の懲役から、7年以下に引き上げるとしている。これまで要件にあった「流布する目的の立証」もなくした。
ディープフェイク性犯罪の撲滅に国をあげて取り組んでいる中、先月24日に開かれた今年のミスコリア選抜大会で、主催者側から候補者に対し、「ディープフェイク映像の中の自分の方が魅力的だったら、本当の自分とのギャップはどうしたら縮められると思うか」との質問がなされた。これに、ネット上では「ディープフェイク性犯罪の被害者のほとんどが女性なのに、ミスコンでする質問か?」「本当に、意味のない質問」「数多くの被害者が苦しんでいる中で、この質問はひどすぎる」などと批判のコメントが相次いで寄せられた。「女性の性を商品化している」としてミスコリア選抜大会そのものへの批判も高まっている。
韓国紙のハンギョレによると、韓国性暴力相談所のキム・ヘジョン所長は同紙の取材に、「実際の被害者が存在するディープフェイク映像を持って仮想の外見競争構図を作り、参加者が『ディープフェイク性犯罪は深刻な問題』だと答えることもできない質問に変えてしまったのは聞くに堪えない」と非難した。
主催者側は、質問の意図について「AIの仮想技術が映画、広告、教育などに広範囲に用いられている社会に対する考えを聞くために質問したが、現在、ディープフェイクが性的な違法映像として悪用されている現実を考えると、より質問に注意を払うべきだった」とし、謝罪した。
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