「タクシーだと言ったのに、5分ほどの距離を1人あたり1万ウォン(約1080円)ずつ取られました。」

先月29日夜、ソウル氏チュング(中区)のミョンドン(明洞)駅で会ったイタリア人観光客のアンドレアさん(38)は、黒いワンボックスカーから降りた後、このように話した。アンドレアさんは「家族とケーブルカーに乗って、外に出るて来たら運転手さんがタクシーだと言ったので乗った」と話し、「1人あたり1万ウォンずつ、合計4万ウォン(約4330円)を現金で受け取って行った」と語った。

韓国政府は今月11日まで外国人観光客歓迎週間イベントを開催するなど、観光客の誘致に力を入れているが、ソウルの主な観光地ではこのように外国人を対象にワゴン車を利用した未登録の違法タクシーを営業する業者が横行している。これは明確な旅客自動車運輸事業法に違反しているが、地方自治体では現金を授受する現場を摘発しない限り取り締まりが難しいのが実情だと吐露した。専門家らは違法運送営業が外国人観光客の不便だけでなく、2次犯罪につながりかねないとして、自治体の積極的な取り締まりが必要だと提言している。

紅葉シーズンを控えたナムサン(南山)のケーブルカー乗り場には、外国人観光客を相手に客待ちする違法タクシー業者を簡単に見つけることができた。しばらく待つと、ある業者が団体観光客を黒いワゴン車に乗せる姿が確認できた。この車両の外側にはタクシーであることを示す表示は何もなかった。車両のナンバープレートもタクシーを意味する黄色いプレートではなく、一般車のナンバープレートだった。

業者側はこの行為をタクシー営業ではなく「無料奉仕」だと反論した。南山ケーブルカーの駐車場で会った業者は「(外国人が)市内まで行くというので、通りがかった途中で乗せてあげている」と話し「お金は一銭も受け取らない無料奉仕だ」と説明した。しかし団体観光客が現れると英語で「タクシー?」、「オンリーキャッシュ(現金のみ)」などと声をかけながら客待ちし、乗客を乗せているのを目撃した。

無許可でタクシー営業をすることは、旅客自動車運輸事業法に明らかに違反した行為だ。旅客自動車運輸事業法に違反した場合、2年以下の懲役または2000万ウォン(約216万円)以下の罰金が科せられる。しかし、違法タクシー業者らは1日も欠かさず違法営業を行っていた。 南山ケーブルカーで3年間勤務している駐車係のピョさん(39)は「雨がたくさん降っている時を除いては、違法タクシーが営業している姿を毎日見ている」と語り、「今日も昼から数十回行ったり来たりして営業している」と話した。

現場にはソウル市が運行する無料のシャトルバスがあり、30分ごとに明洞駅とソウル駅間を往復している。しかし、外国人はもちろん、韓国国内の人でさえシャトルバスがあることをよく知らないため、このバスの利用頻度は低かった。しかしこのシャトルバスは午後8時30分には運行が終わり、その後南山を訪れる観光客は違法タクシーの客引き行為により多くさらされていた。駐車係のピョさんは「ケーブルカーは通常夜景を見に夜に来る観光客の方が多いが、その時間帯に無料のシャトルバスは運行が終わる」と語り、「昼間でも違法タクシー業者が無料シャトルバスの前を遮(さえぎ)って客を乗せて行くことも多く、シャトルバスは利用客が少ない」と説明している。

「証拠なしに取り締まりは難しい」という機関···専門家「積極的に取り締まるべき」

担当省庁ではこのような違法タクシーの営業行為を認知しているが、手の施しようがないとしている。 南山ケーブルカー乗り場と明洞一帯を管轄する中区役所の関係者は「違法タクシーが営業を行っていることは知っているが、『現金を授受する場面』を抑えることができなければ取り締まれない」と語り、「週1回職員が交代で取り締まりに出ているが、業者も証拠がなければ取り締まりが難しいことを知っていて堂々としている」と吐露した。

外国人観光客のタクシー利用に対する不便はますます増加する傾向にある。韓国観光公社が3月に発表した「観光不便通報総合分析書2023」によると、昨年外国人観光客の不便に関する質問を行ったアンケート調査で、タクシーに関する項目が「ぼったくりショッピング」に続いて2位を占めた。新型コロナウイルス感染拡大期以前は3位にとどまっていたタクシー利用に関する不便が増加していることがわかる。

何よりも未登録タクシーは公認タクシーとは異なり、業者の身分証明が不十分で、2次犯罪も懸念される。 実際に昨年の12月にはキョンギド(京畿道)で未登録タクシー行為でグループ19人が検挙されている。このグループには前科16犯の犯罪前科者も含まれていた。今年6月にもチュンチョンナムド(忠清南道)ソサン(瑞山)市で自家用車やレンタカーなどを利用して違法タクシー営業をしていた前科者グループ20人が警察に検挙された。

専門家らは、積極的な取り締まりを行うことだけが解決策だと口を揃えている。ハニャン(漢陽)大学観光学科のチョン・ランス兼任教授は「ぼったくりショッピングは『ミステリーショッパー(偽装顧客)』を投入して証拠を確保している」と語り、「違法タクシーも在韓外国人を投入するなどして潜行調査をするなど、さまざまな方法で取り締まりを行うべき」と述べている。ソ・アラム弁護士は「乗客からの証言など、間接証拠でも処罰することはいくらでも可能だ」と述べ、「2次犯罪につながりかねないので、警察の抜き打ち検問など、政府のより積極的な取り締まりが必要だと思う」と助言している。

これについて警察の関係者は「ケーブルカー乗り場の付近で待機している違法タクシー業者は警察でも認知できていなかった」と述べ、「今後私服警察などを投入して積極的に取り締まりを行う」と明らかにした。
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