韓国のソウルフードのキムチ。食卓に欠かせない野菜で、飲食店でも、メインの料理と共に決まって提供される。また、韓国の家庭では、野菜が取れなくなる冬を前に、家族や親戚一同が集まってキムチをつくる「キムジャン」の文化が根付いてきた。11月から12月にかけては、天気予報でキムチ漬けに適した時期を知らせるキムジャン前線が発表されるほど、冬の一大行事だ。韓国農水産食品流通公社のホームページでは、キムジャンの歴史を紹介している。それによると、1241年の書物「東国李相国集」には、大根を塩漬けにして冬に備えたという記述があるものの、17世紀頃まで、一大行事的な意味合いは薄かったとみられるという。18世紀中頃になると、貴族の間で越冬用のキムチ漬けが始まり、この階層の人々が時季を同じくして漬けるようになったことでキムジャンに至ったと同公社は解説している。上流階級の間でキムジャンが定着すると、やがて庶民の間にも広がり、白菜キムチの普及からキムジャンが習慣化された。また、同公社は「粉唐辛子の使用により保存性が高まったこともキムジャンが浸透した理由」と説明している。20世紀には階層に関係なくキムジャンは広がり、韓国独自の文化として定着していった。2013年にキムジャン文化はユネスコの世界無形文化遺産に登録された。しかし、現在は都市化や核家族化が進み、親戚一同が集まってキムチをつくるという機会は少なくなってきている。また、韓国人のキムチの消費量自体が減少傾向にあるとの指摘もある。
だが、キムチは韓国国民になくてはならないもので、「キムチ宗主国」としてキムチ文化を守っていかなければならないとの認識に異を唱える韓国国民はいないだろう。キムチ文化の発展を願い、2007年には韓国キムチ協会が主体となって11月22日が「キムチの日」に制定された。11月22日としたのは「キムチは素材一つ一つ(11)が集まって、22種類(22)の効能を見せる」とされていることにちなむ。また、11月にキムチの材料である白菜が旬を迎え、この時期がキムチづくりに最も適しているからとの意味合いもある。
来月には、韓国各地で伝統の「キムジャン」の光景が見られそうだが、このほど、心配なニュースが伝えられた。今夏の猛暑の影響により、白菜を含む野菜の価格が上昇している。韓国は今夏、記録的な暑さとなり、韓国紙の中央日報が、気象庁気象資料開放ポータルの気温データを分析した結果として伝えたところによると、今夏(6~8月)の全国の平均気温は25.26度で、1973年に全国で気象観測を始めて以降、最も高かった。平均最高気温は30.4度で、1994年の夏(30.7度)に次ぐ2位だった。
白菜は18~20度での栽培が適するとされるため、今夏の暑さは野菜の中でもとりわけ白菜に大きな影響を与えており、白菜の立ち枯れを起こす根腐れ病などの土壌伝染病が広がっているという。
毎年のように猛暑が続けば、将来、韓国産の白菜キムチが食べられなくなるかもしれないとの懸念も出ている。ロイター通信は「白菜キムチが今、気候変動の脅威にさらされている」と指摘。「研究者や農家、製造業者によると、白菜の品質や生産量が低下しているという」と伝えた。ロイターの記事によると、取材に応じたあるキムチ用白菜の栽培者は、「高温で土壌病害やウイルスが増え、栽培面積が半分に減った」と話した。
農村振興庁の気候変動シナリオは、白菜の作付面積は今後も縮小が進み、2090年までには高冷地で栽培できなくなると予測している。地球温暖化に歯止めがかからない現状を踏まえると、今後、温暖な気候でも育つ品種改良なども必要となってくるだろう。
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