韓氏は南西部のクァンジュ(光州)市生まれ。首都ソウルのヨンセ(延世)大学国文学科を卒業後、1993年に5編の詩を発表し文壇デビュー。翌年には短編小説「赤い碇(いかり)」が新聞に掲載され、小説家としての活動を始めた。2016年には短編集「菜食主義者」で、ノーベル文学賞とともに世界3大文学賞とされる国際ブッカー賞をアジアの作家として初めて受賞。世界から注目を集める作家となった。聯合ニュースは韓氏の作品について「死や暴力など普遍的な人間の問題を詩的で叙情的な文体でつむぐ独創的な作品世界を構築したとの評価を受けている」と紹介した。
今年のノーベル文学賞受賞者に韓氏を選定したスウェーデン・アカデミーは、選考理由について説明する中で、韓氏の作品について「力強く詩的な散文体の文章は歴史的な心の傷と向き合いつつ、人間のもろさをあらわしている。彼女は全ての作品を通して、心と体や、生と死の関係についてユニークな意識を持っていて、それゆえに、彼女の詩的で実験的な文体は現代の散文文学における革新的存在といえる」と評した。
韓国では平和賞を除いて、これまで自国からノーベル賞受賞者が出ていなかっただけに、国民は韓氏の文学賞受賞のニュースに歓喜している。韓国紙のハンギョレは街の声を伝え、記事によると、同紙の取材に応じた35歳の女性は「外国語であるという言葉の壁を越えてノーベル文学賞を受賞したことが感激だ」などと話した。韓国では1970年代の国内の高度経済成長を「ハンガン(漢江)の奇跡」と呼ぶが、35歳の男性は、これと同じ発音である韓氏の名前とかけて「これこそハンガンの奇跡だ」と語った。
一方、韓国メディアによると、韓氏は受賞後の選考委員会とのインタビューで、「ちょうど息子と夕食を終えた8時ごろに受賞のことを知った。とても驚いたし、大変光栄に思う」と話したという。
韓氏の受賞に、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領はフェイスブックで「韓国の文学史上偉大な業績であり、全国民が喜ぶ国家的慶事」とたたえ、「これからも素晴らしい作品で世界中の読者から愛されることを願う」と期待を寄せた。
韓国の著名人も韓氏を祝福。人気グループ「BTS(防弾少年団)」のメンバー、Vは自身のSNSに「軍隊で(韓氏の作品)『少年が来る』を見ました。おめでとうございます」と投稿した。歌手HYNN(ヒン)は韓氏の小説「すべての、白いものたちの」を読んだ際、「私が汚されても、白いものだけを渡したい」との文に感銘を受け、自身の芸名を「白い」の韓国語の発音「ヒン」にしたという。HYNNは所属事務所を通じ「今日、韓江さんのノーベル文学賞受賞のニュースを聞いて本当にうれしかった。韓国作品で韓江さんならではの視線と洞察で全世界を感動させたことが大変素晴らしい」などと称賛するコメントを発表した。
聯合ニュースによると、韓氏の受賞を受け、韓国の大型書店では韓氏の作品の注文が殺到している。インターネット書店でも注文が続き、サイトが一時つながらなくなるなど混乱した。聯合によると、大手書店のキョボ(教保)文庫の関係者は取材に「韓江さんのノーベル賞(受賞)は予想できなかったため、本(の在庫)がない状況」と話した。教保文庫では現在、韓氏の作品はほとんど予約扱いだが、受賞決定から一夜明けた11日、半日で6万冊の売り上げがあったという。
一方、韓氏の作品は、翻訳され、日本でも刊行されている。産経新聞によると、東京・新宿区の紀伊国屋書店新宿本店では特設ブースが設けられた。「別れを告げない」や「菜食主義者」などの作品が並べられ、来店客らが手に取っているという。
韓国紙の朝鮮日報は11日付の社説で「韓江氏のノーベル文学賞受賞は、韓国文学のレベルの高さが世界最高権威の文学賞を通じて認められたという点で、同氏個人の栄誉であるだけでなく、国家的快挙である」とたたえた。その上で「韓江氏のノーベル文学賞受賞は、個人の栄光に留まらず、文化強国である韓国の国際的な位置づけを高める契機となるだろう」とし、「韓国の文学作品を読もうと考えている世界各国の読者たちの注目を集め、韓国文学の市場規模をこれまでになく広げ、韓国文学の国際化にも大きく寄与するであろうことは明らかだ」と期待を寄せた。
授賞式は12月10日にストックホルムで開かれる。
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