<W解説>外交デビューを果たした石破首相=韓国・尹大統領とも対面による初会談
<W解説>外交デビューを果たした石破首相=韓国・尹大統領とも対面による初会談
石破茂首相は今月10日、東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議などに出席するために訪れたラオスで、韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領と対面では初となる首脳会談を行った。石破首相は中国の李強首相らとも会談し、今回、「外交デビュー」を果たした。尹大統領とは来年の日韓国交正常化60周年を控え、首脳同士が相互に訪問する「シャトル外交」を活発に進めながら両国の国民の交流を促進していくことで一致。双方の国民が体感できる具体的な成果を作っていくこととした。今回の日韓首脳会談について、韓国メディアは「両国関係の持続的改善に青信号を灯した」などとおおむね肯定的に伝えた。

会談はラオスのホテルで約30分間行われた。尹大統領は「昨年3月、日本で首脳会談を行って以来、韓日関係は大きく発展している。こうした変化は、両国の指導者の間の揺るぎない信頼があったからこそ可能だったと思う」とし、「前任の岸田総理に続き、シャトル外交を含む活発な意思疎通を通じて、韓日関係の発展をともに図っていきたい」と述べた。さらに尹大統領は「来年2025年は韓日国交正常化60周年を迎える年で、両国関係の希望に満ちた未来像を提示し、両国の国民が関係改善を肌で実感できるよう、石破総理と緊密に協力していきたい」と呼び掛けた。これに対し、石破首相は「日本と韓国の緊密な協力は、地域の平和と安定のためにも非常に重要だ」とし、「尹大統領と岸田前総理が大きく改善させた両国関係を継承し、さらに発展させていきたい」と応じた。その上で、「良好な両国関係を持続可能にするためには、両国国民の交流と相互理解が重要だ」とし、「来年の国交正常化60周年を機に、日本政府としてもそのような環境づくりができればと思う」と述べた。

また、両首脳は、両国間の入国手続きを円滑化する取り組みについて、具体的な議論を活発化させていくことも確認した。入国手続きの円滑化は、双方の国を訪れる観光客が入国審査を出発地で事前に行う「プレクリアランス(事前入国審査)」制度をそれぞれ導入する案を念頭にしたもので、日韓相互の国民の往来が活発化していることを踏まえ、先月、岸田文雄前首相が尹大統領と会談した際、この取り組みを検討することで一致していた。

安全保障分野では、米国を加えた3か国の協力を一層強化していくことを確認。北朝鮮による核・ミサイル開発やロシアとの軍事協力の進展には「深刻な懸念」を共有し、日韓両国や日米韓3か国で緊密に連携することで一致した。一方、石破首相は今回、持論であるアジア版NATO(北大西洋条約機構)については言及しなかった。

今回の会談について、韓国紙のハンギョレは会談の冒頭の様子について、「両首脳は首脳会談の会場に入場する際、手を取り合って親しげにあいさつした。1分余り遅れて到着した石破首相に尹大統領が手を差し伸べると、石破首相は両手で尹大統領の手を握ってあいさつした」とし、友好ムードの中で両首脳の対面による初会談が進行したことを伝えた。一方、韓国メディアのニューシスは「歴史問題など、両国間の敏感な懸案に関する意見交換はなかった」と指摘。その上で、「日本が選挙(衆議院選)を控えているため、歴史問題や歴史教科書問題などの扱いには慎重な雰囲気があったものとみられる」と伝えた。

石破首相にとって今回、初の外遊となったが、夕刊フジは「持論の『アジア版NATO』構想を封印するなど、『石破カラー』を消し、岸田文雄前政権の路線踏襲に徹した」と指摘した。「アジア版NATO」については、「地域の緊張を悪化させるだけ」として、他のアジアの国々からは警戒感がある。同紙によると、ある外交関係者は、同紙の取材に「政権発足間もなく、首相独自の外交方針は固まっていない。持論のアジア版NATOでも国内世論は固まっておらず、国際社会での定期は時期尚早のため、前例踏襲の『安全運転』に徹した」と解説した。
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