ことし6月、ロシアのプーチン大統領は24年ぶりに北朝鮮を訪れ、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記と首脳会談を行った。当時の米CNNは「欧米への反感を共有する両国の軍事協力強化に国際的な懸念が出る中で、ロ朝の連携が深まっていくことを予想させる光景だった」と伝えた。会談で両首脳は、ロシアと北朝鮮のどちらか一方が戦争状態になった際、軍事的な援助を提供することなどを明記した「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名した。条約は23の条項からなり、第4条では集団的自衛権を認める国連憲章と、自国の法律に従い、「どちらか一方が武力侵攻を受け、戦争状態になった場合、遅滞なく保有するすべての手段で軍事的及びその他の援助を提供する」と明記されている。また、8条では「戦争を防止し、地域と国際的な平和と安全を保障するための防衛能力を強化する目的で、共同措置を取るための制度を設ける」などとしている。ロシアが北朝鮮とこの条約を締結した背景には、ウクライナへの軍事侵攻が長期化する中、条約によって北朝鮮との軍事協力を拡大させたい思惑があったとみられている。
両国は関係性を強めており、プーチン大統領と金総書記の親密ぶりは記念日などの際に祝電を頻繁にやり取りしていることからもうかがえる。プーチン大統領が、今年9月の北朝鮮の建国記念日に送った祝電では、6月に締結した「包括的戦略パートナーシップ条約」に触れ、「我々が共同の努力で、包括的戦略パートナーシップが計画的に強化されることを確信している」とした。金総書記も最近では今月7日、72歳の誕生日を迎えたプーチン大統領に「最も親しい同志へ」などとする祝電を送った。
プーチン大統領は今月14日、「包括的戦略パートナーシップ条約」を批准する法案を下院に提出した。議会での採択を経て、大統領署名後に成立する見通しだ。
ロシアと北朝鮮の軍事連携が一段と強まることが懸念される中、ロシアの侵略をうけるウクライナの国営通信をはじめとする複数のメディアは15日、ロシア軍が北朝鮮兵で構成する部隊を編成し、ウクライナとの国境地帯に配備していると伝えた。一方、ロシア西部ブリシャスク、クルスク両州のウクライナとの国境付近では、北朝鮮軍兵士18人が集団脱走したとも報じられた。
ウクライナの現地メディア、ウクラインスカ・プラウダが15日に報じたところによると、ロシア軍が北朝鮮兵で編成したとみられる特別部隊の名称は「特別ブリヤート大隊」。現時点で、兵士たちの役割は明らかになっていないが、ロシア西部クルスク州の一部を占領するウクライナ軍との戦闘に加わるとの見方が出ている。
北朝鮮の派兵をめぐっては、ウクライナ側からの情報発信が相次いでおり、ゼレンスキー大統領は13日、「ロシアと北朝鮮の結束が強まっている」とし、「北朝鮮から武器だけでなく、実際には人員も派遣されている」と批判した。
ロシア政府は北朝鮮の派兵を否定しているが、青木一彦官房副長官は「最近のロ朝軍事協力の進展の動きは、ウクライナ情勢のさらなる悪化を招くのみならず、我が国を取り巻く地域の安全保障に与える影響の観点から深刻に憂慮すべきものだ」と述べた。
米国務省のミラー報道官は「もし本当ならば、両国の結びつきが著しく進んでいることを示すことになる」と懸念を示した上で、「大きな犠牲を出し続けているロシアが、さらにやけになっていることも示している」と指摘した。
また、韓国国防部(部は省に相当)のキム・ヨンヒョン長官は今月8日、ウクライナ東部ベネツク州で北朝鮮軍の士官6人が死亡したとの報道に接し、「事実である可能性が高い」との見方を示している。
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