パク大使は、ユン・ドンミン前大使の後任として8月に就任した。パク氏は日韓関係を長く見続けてきた研究者で、日本の政界にも精通した人物だ。韓国政府は6月にパク氏の起用を内定したが、当時、内定を伝えた韓国紙の朝鮮日報は、「韓日間の懸案解決も新駐日大使に期待されている」と報じた。
パク大使は着任のために来日した際、「両国の信頼関係と協力に役立つならば、どこにでも駆け付けたい」と意欲を示した。
その言葉通り、先月には新潟県を訪れ、世界文化遺産に登録された「佐渡島の金山」について花角英世知事らと意見交換した。
佐渡金山には戦時中、労働力不足を補うため、朝鮮半島出身労働者が動員された。韓国側は、強制労働があったとして、長く登録に反対し続けてきた。日本が登録を目指すのであれば、朝鮮半島出身労働者が強制労働に従事した歴史を反映すべきとの主張を続けてきた。
韓国は、新たな世界遺産を決めるユネスコの世界遺産委員会であり、世界遺産登録の決定に当たっては全会一致の基本原則があることから、韓国の最終判断が注目された。日韓両政府は、朝鮮半島出身労働者に関する歴史を含む「全体の歴史」を現地の展示に反映することで合意。7月に行われた世界遺産委員会では、韓国を含む全会一致で「佐渡島の金山」の登録が決定した。
韓国政府としては最終的に登録を容認した形だが、韓国の野党は、その後も、歴史的事実の反映が不十分だと指摘し続けており、8月には「共に民主党」の国会議員ら5人が佐渡を視察。佐渡鉱山で働いた朝鮮半島出身者の過酷な労働状況などを記した展示などを見学した一行は、展示で動員の「強制」に触れていないとし、明示するよう求めた。しかし、日本政府は「戦時の徴用は国際法上の強制労働に当たらない」との立場で、このことから展示に「強制」の文言を入れていない。
今月7日、パク氏は日本記者クラブで会見し、関係が後戻りしない日韓協力体制の構築に意欲を示した。その上でパク氏は1998年に発表された「日韓共同宣言」に代わる新たな共同声明の発表に意欲を示した。新たな声明には、両国間の歴史認識問題に関する記載をどのようにするかが焦点となりそうだが、パク氏は会見で「特定の文言にこだわる必要はない」と述べた。
18日、駐日韓国大使館では、韓国国会外交統一委員会による国政監査が開かれ、パク氏は委員からの質問に答弁した。「共に民主党」のイ・ジェジョン議員はパク氏に対し、「日本メディアとのインタビューや、日本側の関係者との面会の際、「『強制労働』という直接的な言葉を使っていない」と指摘。「使うことはできないのか」と質問した。これに対し、パク氏は外交的な影響を理由に挙げ、「『使う』と明言することはできない」と答弁した。その後、別の議員が再度要求すると、「(今後は)そうする」とし、さらに「強制労働については立場を明確に示したい。韓国人労働者が動員されたのは紛れもない事実であり、政府の方針に変わりはない」と述べた。
前述のように、強制労働か否かの見解は日韓で食い違っており、パク氏は駐日大使としての立場から、今後も表現方法をめぐって難しい判断を迫られることになりそうだ。
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