<W解説>韓国・ソウル梨泰院の事故から明日で2年=遺族が望む更なる真相究明
<W解説>韓国・ソウル梨泰院の事故から明日で2年=遺族が望む更なる真相究明
韓国・ソウルの繁華街、イテウォン(梨泰院)で起きた雑踏事故から明日29日で2年を迎える。これを前に、事故現場では26日、遺族らが集まり、犠牲者を追悼した。事故をめぐっては、警察や行政の不手際が問題となり、地元警察署長や区長、ソウル警察庁長官らが起訴された。先月から今月にかけて判決公判があり、ソウル西部地裁は署長に実刑判決を言い渡した一方、ヨンサン(竜山)区長、長官らには無罪を言い渡した。反発した遺族たちは「私たちは誰を信じて、国民は誰を信じて生きれば命が守れるのか」と訴えている。また、遺族たちは同事故のこれまでの捜査・裁判は刑事処罰中心で、個人に対する刑事裁判ではきちんとした真相解明はできないとして、今月2日、「10・29梨泰院惨事真相究明と再発防止のための特別調査委員会」に更なる真相究明を求める要望書を提出した。

事故は一昨年の10月29日、ハロウィーンを前にした週末で人がごった返す梨泰院の通りで起き、日本人2人を含む159人が死亡した。犠牲者は10代、20代の若者が多かった。

この事故では警備体制の甘さや警察や消防の対応の不備が指摘された。新型コロナウイルスの流行に伴う行動制限がない中で迎えるハロウィーンということで、多くの人出が予想されていたが、警備に動員された警察官らの人数は少数だった。また、事故発生の数時間前から「人が多すぎて圧死しそうだ」などといった通報が警察や消防などに多数寄せられていたが、適切な対応を取らなかったことが事故を招いたとの批判が噴出した。

事故を受けて、韓国の警察庁は約500人で構成する特別捜査本部を発足させ、捜査を進めた。昨年1月、捜査結果を発表し、管轄の自治体や警察、消防など、法令上、安全予防や対応の義務がある機関が事前の安全対策を怠るなど、事故の予防対策を取らなかったために起きた「人災」と結論付けた。

地元警察署長や区長、ソウル警察庁長官らが起訴され、裁判にかけられた。先月30日、ソウル西部地裁は業務上過失致死傷などの罪に問われた当時の警察署長、イ・イムジェ被告に禁錮3年(求刑7年)の実刑判決を言い渡した。現場対応を指揮した責任者に業務上の過失が求められたのは初めてのことだった。判決で地裁はイ被告について「速やかに事故状況を把握する努力を怠り、講じた措置も遅きに失した」と指摘。「被告人らが注意義務を果たしていれば予防できた人災で、遺族らも厳罰を望んでいる」とした。

一方、同地裁は、事故が発生したヨンサン(竜山)区の区長で、業務上過失致死傷などの罪に問われたパク・ヒヨン被告については無罪(求刑7年)を言い渡した。地裁は、主催者のいない行事に対し、安全管理計画を立てる義務規定はないとことを理由に挙げ、「人波の管理や規制に関する直接的、具体的な業務上の注意義務が行政区にあると見るのは難しい」と指摘した。この判決に遺族は反発。遺族の会のイ・ジョンミン委員長は「159人も死亡したのに無罪があり得るのか。この国の司法府はどこにあるのか」と怒りをあらわにした。

さらに、今月17日には同地裁で、業務上過失致死傷罪に問われたソウル警察庁のキム・グァンホ元長官の判決公判があり、地裁はキム氏に無罪を言い渡した。キム氏は同事故をめぐり起訴された当時の警察幹部の中で最も階級が高い。地裁は、キム氏が内部報告から事故が起こる危険性を把握できなかったと指摘。検察が提出した証拠だけで業務上の過失があったことなどを証明するのは困難と判断した。遺族らは会見を開き、「子どもたちは警察を信じて通報したのに十分な措置が取られず亡くなった。これで無罪になるなら、どこに通報すればいいのか」と訴えた。

事故から29日で2年となる。これを前に26日には遺族らが追悼行事を開いた。現場で花を手向け、祈りを捧げた後、「事故の真実を究明せよ」などと声を上げながらソウル中心部まで行進した。

遺族たちは今なお真相究明が不十分と指摘しており、今月2日には、「警察の特別捜査本部や国会の国政調査特別委員会が明らかにできなかった事故の具体的な原因を究明してほしい」として、特別調査委に要望書を提出した。要望書では、事故があった年に行われた大統領府の移転により、警察、地方自治体などの職員が大統領室の関連業務に集中したことが事故に影響を及ぼしたのかなど計9項目を挙げ、検証するよう求めた。韓国紙のハンギョレによると、調査委の委員長は「2年近く闘ってきた遺族の方々が悔しい思いをしないように、また、苦しみを乗り越えることができるように、犠牲者たちがどのように亡くなったのか、真相を明らかにすることに最善を尽くす」と語った。
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