これにより、李明熙(イ・ミョンヒ)総括会長の長男、鄭溶鎭(チョン・ヨンジン)新世界グループ会長がイーマートを、溶鎭氏の妹である有慶氏が新世界百貨店をそれぞれ経営する構造が強固になった。
財界では、韓国では異例といえる娘から娘への経営権継承が行われた点が注目を集めている。
李明熙氏はサムスン創業者の李秉チョル(イ・ビョンチョル)氏の末娘で、故李健熙(イ・ゴンヒ)前会長の妹にあたる。サムスングループで百貨店を運営していた新世界は、1991年にグループから分離された。97年には公正取引法上もサムスングループと完全に分離され、イーマートの成長に伴い韓国屈指の流通企業となった。
新世界グループは長い間、溶鎭氏を中心とする経営体制が定着していたが、2011年からイーマートと新世界百貨店の分離手続きが進められ、現在の兄妹経営体制が構築された。
今回の継承は、有慶氏の優れた経営力が評価されたためという見方が大勢だ。
96年に朝鮮ホテルの常務として経営者の道に進んだ有慶氏は、09年に株式会社新世界の副社長に昇進。15年には新世界百貨店の総括社長に就任し、今回の会長昇進により韓国主要グループ200社と主要中堅企業60社の中で1970年以降に生まれた初の女性会長となった。
有慶氏の母、李明熙氏は98年に会長に就任し、サムスン家初の女性経営者かつ成功した女性トップの第1世代となった。有慶氏の会長昇進は、いとこの李美敬(イ・ミギョン)CJグループ副会長や李富真(イ・ブジン)ホテル新羅社長など、一家の代表的な女性経営者の中では初めて。
財界では、新世界グループが兄妹による経営分離を安定的に推進している点を高く評価している。
韓国では大企業オーナー一家の経営権継承に絡む紛争が頻発しており、先ごろも韓美薬品グループやハンコック・アンド・カンパニーグループ(旧ハンコックタイヤグループ)などで「お家騒動」が勃発した。
韓美薬品グループでは、創業者の林盛基(イム・ソンギ)会長が死去した後、子どもたちが相続税の財源を準備する中で経営権争いが起きた。林氏の妻と長女の林珠賢(イム・ジュヒョン)副会長が化学大手のOCIグループとの経営統合を推進したが、長男と次男の反対により統合手続きが頓挫した。
ハンコック・アンド・カンパニーグループは趙洋來(チョ・ヤンレ)名誉会長が20年に次男の趙顯範(チョ・ヒョンボム)会長に経営権を継承して以降、紛争を繰り返している。昨年12月には長男の趙顯植(チョ・ヒョンシク)顧問らが経営権を得るため私募ファンドと手を組んで株式公開買い付け(TOB)に乗り出したが、失敗に終わった。
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