1期目の政権で掲げた「米国を再び偉大に」というスローガンを再び掲げ、同盟関係を取り引きの観点からとらえるのであれば、韓国にも役割と費用のさらなる負担を要求すると懸念されるためだ。
韓国の外交の中心である韓米同盟が揺らげば、自由民主主義を基盤とした価値外交と中国やロシアに対する政策など韓国のグローバル戦略が全て大小の影響を受けることになる。
特に隙のない協力を誇った北朝鮮への対応でも、不協和音が起こる恐れがある。
トランプ氏は1期目で予想が難しい戦略を打ち出しただけに、2期目での韓国政府の対応も難度が高くなると専門家も指摘している。
◇トランプ氏 在韓米軍の駐留経費巡り揺さぶりか
韓米は米大統領選を控えて、2026年以降の在韓米軍の駐留経費負担を定める新たな「防衛費分担特別協定」(SMA)の交渉を急ぎ、今月4日に正式署名を交わした。26年の駐留経費の韓国側負担額は前年比8.3%上昇した1兆5192億ウォン(約1672億円)とすることで合意した。30年までの毎年の引き上げ率は、現行の国防費の増加率ではなく消費者物価指数(CPI)の上昇率が適用される。
しかしトランプ氏は交渉妥結後も韓国を「マネーマシン」と呼び、自身が大統領になれば、韓国から駐留経費として年間100億ドル(約1兆5399億円)を支出させるなどと発言している。
トランプ氏は政権1期目の2019年、駐留経費を巡る交渉で既存の約6倍にあたる年間50億ドルを要求した前例がある。交渉は難航し、結局バイデン政権発足後の21年になって妥結した。
韓国政府はトランプ氏が就任する前にSMAの国会承認を終えて発効させる方針だが、トランプ氏がこれに関わらず、再交渉を求める可能性もある。
◇在韓米軍と北朝鮮問題が焦点
在韓米軍の駐留経費問題は在韓米軍の撤退や縮小につながる可能性もある。
世宗研究所の李容濬(イ・ヨンジュン)理事長は、トランプ氏が場合によっては東アジアの防衛拠点を韓国から日本に移動させる可能性もあると指摘した。
またトランプ氏が北朝鮮の核保有を認め、今まで韓米同盟が追求してきた「北朝鮮の非核化」の目標を捨てる懸念も出ている。一部では大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射中断など「核凍結」の対価として制裁を緩和するというシナリオまで取り沙汰されている。
専門家の間では、韓国だけが北朝鮮の核の脅威にさらされる状況につながり、韓米間の対北朝鮮協力はもとより、同盟の根幹まで揺らぐ最悪の局面が繰り広げられる危険性まで提起されている。
ウクライナ戦争の早期終息を追求するトランプ氏の対外政策基調を考慮すれば、北朝鮮とロシアの軍事協力に対する韓国政府の対応も影響を受ける可能性がある。
トランプ氏がウクライナ支援を中止すれば、韓国も支援に慎重にならざるをえないものとみられる。
ただ外交当局者らは、「韓米同盟に対する米国の支持は党派を超える」とし、「トランプ政権2期目も韓米同盟は堅固に維持され、影響は限定的だ」と口をそろえる。
選挙に先立って韓国側と接触したトランプ氏側の関係者の多くが、バイデン政権時の韓米日協力の強化について高く評価したという。
危機はあるものの、機会もあるという分析も出ている。韓国軍のミサイル弾頭重量の制限解除や、ロケットに対する固体燃料の使用制限の解除など、1期目のトランプ政権で実現したように、2期目でも円満な関係を維持できれば、韓国が望む分野での成果が期待できるという見方もある。
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