会見は質疑応答を含め約140分にも及んだ。冒頭、「私の周囲のことで国民に心配をおかけした。心からおわび申し上げる」と謝罪した。「周囲のこと」とは、金夫人をめぐる疑惑のことだ。金氏には、自動車会社の株価操作に関与した疑惑や、知人から高額なブランドバッグを受け取った疑惑が指摘された。だが、ソウル中央地検は先月、いずれの疑惑についても金氏を不起訴とした。しかし、最近では、大統領夫妻が国政選挙で与党候補の公認に不当に関与したとの疑惑が新たに浮上。追及する最大野党「共に民主党」は、金氏をめぐる疑惑を政府から独立した特別検察官に捜査させる法案(キム・ゴンヒ特検法)の成立を目指している。だが、尹氏は野党主導の下、国会で可決した同法案に対して、拒否権を行使した。拒否権が行使された法案を再可決するには、在籍議員の過半数の出席と、出席議員の3分の2以上の賛成が必要となる。
会見で尹氏は2022年5月に大統領に就任してからの2年半を振り返り、「本当に休まず走ってきた。国民の皆さんから見れば足りないことが多いだろうが、私の心は常に国民のそばにあった」とした一方、「国民生活のため、韓国の未来のために始めたことが国民の皆さんに不便を与え、私の周辺のことで国民に心配もかけた」と反省も口にした。「残りの任期2年半は国民生活の変化を最優先し、政府の力を集中する」とし、物価高対策や社会的弱者の福祉拡大、それに尹政権として打ち出している、医療、年金、労働、教育の4大改革をさらに進める考えを示した。
一方、尹氏は、前述のように会見冒頭で謝罪したが、具体的な理由については言及を避け、「任期後半を迎えるにあたり、国民に感謝と謝罪をする必要があると考えた」と強調した。また、選挙介入疑惑については「不適切なことはしておらず、隠すことはない」と否定した。
この日の会見では、外国人記者による韓国語での質問に、尹大統領が困惑した表情を浮かべ、「言葉がよく聞き取れないのだが…」と関係者にフォローを求める場面があった。質問したのは米国の北朝鮮専門ニュースサイト「NKニュース」の最高経営責任者(CEO)のチャド・オキャロル氏。比較的流ちょうな韓国語で、南北関係に関して問うたが、尹氏は司会に聞き取れなかったと伝えた。司会が英語でもう一度質問するよう求めると、オキャロル氏は「韓国語の試験みたいにして申し訳ありません」と韓国語で述べた上で、英語で再度質問した。この場面を編集した映像がSNSやオンラインコミュニティにシェアされるや、視聴した韓国のネットユーザーは「失礼だ」「聴いてわからないほどではなかった」「一生懸命に韓国語での質問を準備してきた外信記者に、『もう一度言ってほしい』と丁寧に言うこともできたはず」などと尹氏の対応を批判している。
尹氏は10日、任期5年の折り返しを迎えた。世論調査会社の韓国ギャラップが先月29日~30日にかけて行った調査では、尹大統領の支持率は19%と、就任以来、初めて10%台となり、同社が8日に発表した最新の世論調査ではさらに2ポイント下落して17%となった。
不支持の理由で最も多かったのは、いずれの調査でも「金建希氏をめぐる問題」で、これに「経済・国民生活・物価」、「コミュニケーション不足」の順で続いた。
会見の国民の受け止めは芳しくなく、韓国紙のハンギョレによると、ある大学生は同紙の取材に「今回は真摯な謝罪をするだろう、反省するフリくらいはするだろうと期待したが、ごまかしてやり過ごそうとする姿勢に一層腹が立つ」と憤り、「金夫人の疑惑が出続けているのに、やましいところがないなら、なぜ、『キム・ゴンヒ特検法』に拒否権を行使し続けるのか問いたい」と語った。
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