<W解説>韓国軍艦に日本の防衛相乗艦=日韓防衛協力の改善で、今後の注目は国際観艦式での自衛艦旗めぐる懸案の解消
<W解説>韓国軍艦に日本の防衛相乗艦=日韓防衛協力の改善で、今後の注目は国際観艦式での自衛艦旗めぐる懸案の解消
中谷元・防衛相が今月7日、神奈川県の海上自衛隊横須賀基地で韓国海軍艦の入港歓迎行事に出席した。韓国の強襲揚陸艦「マラド(馬羅島)」に乗艦し、両国の防衛協力強化をアピールした。日本の防衛相が韓国の軍艦に乗艦するのは初めてとみられる。日韓の防衛交流は、2018年に起きた韓国軍による自衛隊機へのレーダー照射問題で滞ったが、今年6月に防衛相間で再発防止策に合意し、再開した。今後も交流が一層活発化する見通しの中で、韓国海軍が来年5月に南部のプサン(釜山)で開催する国際観艦式に、韓国側が日本を招待するのか、仮に招待した場合、自衛隊が参加するのか注目される。2018年に南部のチェジュ(済州)で開催された国際観艦式の際は、韓国側は日本の海上自衛隊を招待したが、参加する場合は旭日旗である自衛艦旗の掲揚自粛を要請した。韓国では、旭日旗に関して「日本の侵略を受けた韓国などに歴史の傷を想起させる明白な政治的象徴」との主張があり、嫌悪感を抱く人もいる。一方、自衛隊を含む軍艦艇は国籍を示す「外部標識」を掲示する必要があるという国際ルールがある。自衛隊は「海上自衛官にとって自衛艦旗は誇りだ。降ろして行く(参加する)ことは絶対にない」(当時の統合幕僚長)として韓国側の要請を受け入れず、結局、参加を取りやめた経緯がある。

横須賀基地には、6日に紀伊半島沖で海自の練習艦「はたかぜ」との共同航行訓練を行った、マラドを含む3隻が寄港した。海自と韓国海軍の共同訓練の実施は約7年ぶり。201 8年12月、能登半島沖の日本海で韓国海軍駆逐艦が海自のP1哨戒機に対し、射撃に用いる火器管制レーダーを照射した問題を受けて日韓の防衛交流は滞った。しかし、日韓関係の改善の流れの中で、今年6月、両国の防衛相間でこの問題の再発防止策に合意。自衛隊と韓国軍のハイレベルの交流を再開することでも一致した。

6日に行われた共同訓練は、レーダー照射問題以降、初の実施となり、防衛当局間の関係改善をうかがわせた。訓練に参加した韓国海軍艦は海自の横須賀基地に寄港し、現地では歓迎式典が行われた。出席した中谷防衛相は「韓国は、わが国にとって大変、大切なパートナーだ。北朝鮮が弾道ミサイルを発射するなど、厳しい安全保障環境の中、日韓の防衛協力は、これまで以上に重要性を増している」と述べた。中谷氏は寄港したマラドに乗艦。「日韓防衛協力・交流の進捗(しんちょく)を直接確認することができ、たいへん有意義だった」と話した。日本の防衛相が韓国海軍艦に乗艦したのは初めてとみられる。安全保障分野での日韓の緊密な連携をアピールした形だが、日韓の防衛協力が活発化する中で、今後、注目されるのは、韓国海軍が来年5月に南部のプサン(釜山)で開催する国際観艦式に自衛隊が参加するか否かだ。前述のように、2018年に南部のチェジュ(済州)で開催された国際観艦式の際は、韓国側は日本の海上自衛隊を招待したが、旭日旗である自衛艦旗の掲揚をめぐって日韓双方で折り合いがつかず、海自は参加を取りやめた。

観艦式は、国家元首が自国の艦隊を観閲する行事で、隊員の士気を高めることに加え、国際親善や防衛交流の促進などを目的に、友好国などを招待して開かれる。

2022年11月に海自が相模湾で開催した国際観艦式の際は、海自は事前に韓国に対して招待状を送ったものの、当時のムン・ジェイン(文在寅)政権は参加するか否かの結論をすぐに出せなかった。当時、日韓関係が冷え込んでいたことに加え、韓国の将兵が旭日旗である自衛隊旗に向かって敬礼することへの懸念があったためだ。日本側が招待状を送付した当時の文政権から、同年5月、日韓関係改善に意欲を示すユン・ソギョル(尹錫悦)政権に変わり、韓国軍は熟慮の末、参加を表明。海軍の軍事支援艦「昭陽」を相模湾に送った。「昭陽」の乗組員は、視察に訪れた岸田文雄首相(当時)が乗った自衛隊の護衛艦「いずも」に敬礼した。

また、昨年5月に韓国南部の済州島沖で行われた韓国政府主催の多国間訓練の際には、海上自衛隊の護衛艦が旭日旗の自衛艦旗を掲げて南部の釜山港に入港した。2018年の国際観艦式の時と打って変わって、韓国国防部(部は省に相当)は「国際慣例に従う」として容認。入港が実現したことから、日本では、韓国による自衛艦旗への対応が、国際ルールに沿った形に戻ったと解釈された。

韓国海軍は来年5月に釜山で行う予定の国際観艦式で、日本のほか、米国やオーストラリア、中国、カナダ、英国、インド、インドネシア、シンガポールなど数十カ国を招待する見通しだ。8月、これを伝えた韓国・聯合ニュースは「自衛艦旗の掲揚が再び問題になる可能性がある」とした一方、「韓米日および韓日の安全保障協力を重視してきた尹錫悦政権は、旭日旗をめぐる論争が起きても、自衛艦旗を掲げた日本艦艇の参加を受け入れるものとみられる」と予測した。

一方、韓国紙の中央日報が今月、伝えたところによると、韓国政府筋は「まだ、招待の対象は検討中の段階」とし、「今月末ごろ該当国に通知する予定だが、日本が含まれるかはまだ確定していない」と話している。
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