日本の防衛相が訪韓したのは2015年が最後。当時も中谷氏が防衛相を務めていた。防衛相会談が行われ、韓国の国防相は中谷氏に対し、朝鮮半島の有事の際、日本が集団的自衛権などを行使する場合、韓国の同意なしに領域内に入ることがないよう求めた。これに対し、中谷氏は、他国の領域で自衛隊が活動する場合、国際法に従って同意を得るのが日本の方針と説明。韓国にも当てはまると伝えた。韓国では、日本の植民地支配を受けた歴史的な経緯から自衛隊が韓国に入ることに抵抗が強く、現在もこのことが度々論争になっている。最近では先月、最大野党「共に民主党」のホン・ギウォン議員が国防部に対し、「自衛隊が在韓アメリカ軍基地に物資や人を輸送するため一時的に韓国に入る場合、韓国国会の同意が必要なのか」と書面で質問。これに対し、国防部は同意は必要ないとの見解を示した。この見解を受けてホン氏は「韓国国民の意思に反する自衛隊の朝鮮半島への進入は、絶対に不可能だと対外的に明確にしなければならない」と強調した。当時の韓国紙ハンギョレは社説で「ユン・ソギョル(尹錫悦)政権は国民の目と耳をふさぎ、日本との軍事協力を不可逆的なものにしようと一生懸命になっている」と批判した。
6月に行われた日韓防衛相会談でレーダー照射問題の再発防止策に両国が合意して以降、再び防衛交流が活発化した。今月6日には、紀伊半島沖で海上自衛隊の練習艦と韓国海軍艦が共同航行訓練を行った。海自と韓国海軍の共同訓練の実施は約7年ぶりのことだった。訓練後、神奈川県の海自横須賀基地には韓国の強襲揚陸艦「マラド(馬羅島)」など3隻が寄港した。基地では入港の歓迎式典が行われ、出席した中谷氏は「韓国は、わが国にとって大変、大切なパートナーだ。北朝鮮が弾道ミサイルを発射するなど、厳しい安全保障環境の中、日韓の防衛協力は、これまで以上に重要性を増している」と述べた。中谷氏は寄港したマラドに乗艦。「日韓防衛協力・交流の進捗(しんちょく)を直接確認することができ、たいへん有意義だった」と話した。日本の防衛相が韓国の軍艦に乗艦するのは初めてとみられている。
中谷氏は、先月、韓国大使館が主催した行事に出席した際、「できるだけ早く韓国を訪問する予定だ」と話しており、日本の複数のメディアによると、来月下旬に訪韓し、国防部の金龍顕長官と会談する方向で調整に入った。
中谷氏が訪韓に意欲を示している背景には、北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返していることや、ロシアとの軍事協力を進めている中、これまで以上に強固な日韓の安全保障・防衛協力が求められているからだ。中谷氏は会談で、米国を含めた3か国の防衛協力を一層進める方針を確認したい考えだ。
また、今月、米大統領選でトランプ氏が返り咲きを果たしたことも影響している。日本経済新聞は19日の社説で「中谷防衛相が年内訪問を韓国側に打診したのは時宜を得ている」とした上で、「トランプ政権になれば、日韓は米軍駐留経費の大幅負担増を迫られる可能性が高く、保護主義や米中対立のあおりを受ける点でも利害を同じくする」と指摘。「共通のリスクに声を一つにする効果は大きい」とした。中谷氏は会談で、米トランプ次期大統領就任を前に、日韓、日米韓の協力継続の重要性を確認したい考えだ。
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