<W解説> 2年ぶりに中韓首脳会談、両国関係改善の兆し=きっかけは米大統領選でのトランプ氏勝利?
<W解説> 2年ぶりに中韓首脳会談、両国関係改善の兆し=きっかけは米大統領選でのトランプ氏勝利?
韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するために訪れたペルー・リマで今月15日(現地時間)、中国の習近平国家主席と首脳会談を行った。両首脳が会談するのは2022年11月以来、2年ぶり。尹政権が米国との連携を強化する中、中韓関係は冷え込んでいたが、最近、中国は韓国との関係改善に向けて積極的な姿勢を示している。2年ぶりに首脳会談が実現したのも関係改善の表れと言える。会談で習氏は尹氏に訪中を要請。これについて韓国紙の東亜日報は、「第2次トランプ米政権の発足を控え、韓国を引き込むとともに、『手なずけよう』としているのではないかとの見方もある」と報じた。

中韓関係が冷え込む中、今年5月には中韓外相会談が開かれ、中国の王毅外相は韓国のチョ・テヨル外交部長官(外相)に不満を吐露。韓国が安全保障面で日米との連携を強めていることを念頭に「近頃、中韓関係は困難や難題に直面している。これは双方の共通利益に合致せず、中国側が望んでいるものではない」とけん制した。また、台湾問題について「韓国は『一つの中国』の原則を守り、台湾関連の問題を慎重に処理し、両国関係の政治的な基調を安定させなければならない」と述べた。一方、チョ氏は「両国関係の発展のためにはどちらか一方ではなく、両国が共に努力することが重要だ」とし、「困難があっても、立場の違いが軋轢(あつれき)に飛び火しないよう慎重に管理しつつ、協力のモメンタムを維持しなければならない」と述べた。

会談当時の韓国紙・朝鮮日報は「(チョ氏は)前日午後に、北京の釣魚台国賓館で行われた王氏との会談と夕食会では合意文の発表には至らず、チョ長官と習近平・国家主席の会談も実現しなかった」と指摘。東亜日報は「台湾や北朝鮮の核、脱北者の強制送還など、敏感な懸案事項については依然として認識の違いがあることを確認した」と伝えた。

長く、関係改善の見通しが立たなかったが、中国は最近になって韓国との関係改善に向けて積極的な姿勢を示し始めている。今月8日からは、韓国などに対し、ビザなし入国を来年末までの期間限定で許可。中国が韓国人を対象にビザを免除するのは、1992年の中韓国交正常化以降、初めてのことだ。また、両国間のハイレベルの対話も最近、活発化している。

こうした中、中韓首脳は2年ぶりに会談の席についた。会談で尹大統領は、北朝鮮がロシアとの軍事協力を強めていることや、軍事挑発を繰り返していることが朝鮮半島情勢を不安定にしていると指摘。中国が建設的な役割を果たすよう求めた。また、中韓関係について、これまで中心となってきた経済分野のみならず、人的交流面での協力強化も呼び掛けた。これに対し習氏は、中韓両国が健全で安定した関係発展を促進し、地域の安定と繁栄に貢献すべきだとの考えを示した。また、習氏は尹氏に対し訪中を要請した。

韓国の公共放送KBSは「今回の会談は、トランプ次期米大統領が『自由優先主義』を掲げ、中国への関税を大幅に引き上げるなどして、米中間の貿易競争が激しさを増すものとみられる一方、中国の伝統的な友好国とされてきた北朝鮮がこのところ、ロシアと急接近し、中国よりロシアに頼る姿勢を鮮明にしたことで、(中朝)関係が疎遠になっている中で行われた」と解説した。

ここに来て、習氏が一転、尹氏に秋波を送るようになったのは、米大統領にトランプ氏が返り咲くことになったことも影響しているとみられる。韓国紙の中央日報は「トランプ氏の大統領就任後、中国に対する米国の攻勢強化が予想される中で、トランプ第2次政権の貿易攻勢や安保体制の変化の可能性を懸念する韓国と日本に対して、中国が接近を試みているということだ」と解説した。また、同紙は、今回と前回2022年11月の会談とで、中国メディアの扱いに違いがあることに着目。「中国人民日報は、17日の報道で尹大統領と習主席が握手する写真を1面トップに配置した。2022年に尹大統領の写真を2面の一番下に載せたこととは対照的だ」と指摘した。

関係改善の兆しが見え始めた中、韓国紙のハンギョレは17日付の社説で「北朝鮮とロシアの軍事協力、米国の『トランプ第2次政権』の発足など、急変する国際情勢の中、韓国は朝鮮半島の平和のために『中国レバレッジ(小さな力で大きなものを動かす仕組み)』を積極的に活用する高度な外交戦略が求められている」と指摘。韓国政府に対し、「これまでの対立構図を脱し、国益重視の『実利外交』の観点から対中関係を解決していってもらいたい」と求め、「韓国は、トランプ2期目で予想される米国の対中圧力状況を、むしろ韓中関係改善の契機としなければならない」と主張した。
Copyrights(C)wowkorea.jp 5