ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が3日の夜に突然宣布した非常戒厳は、6時間後に解除された。非常戒厳布告令が発効して2時間後の4日午前1時に国会で本会議が開かれ190人の賛成により戒厳解除要求案を可決され、尹大統領がこれを受け入れて午前4時30分の閣議で解除案を議決したことによるものだ。1979年のパク・チョンヒ(朴正煕)大統領暗殺事件以降45年ぶりに宣言された韓国の歴史上13回目の非常戒厳は、超短時間で不発に終わった。

尹大統領が掲げた名分は「破廉恥な従北反国家勢力を一挙に撲滅し、自由憲政秩序を守るため」というものだった。しかし今回の戒厳宣言は、要件や手続きなどで憲法と法律に違反している点が多い。憲法77条1項は「戦時事変またはこれに準ずる国家非常事態において、兵力で軍事上の必要に応じたり、公共の安寧秩序を維持する必要がある時に戒厳を宣布することができる」と規定している。ならば、現在の韓国が直面している状況が国民の基本権を制約し、三権分立を無視してもいいほどに危険だと言えるのか。尹大統領は共に民主党が掌握した国会での無差別弾劾の乱発と特検法、予算編成での横暴などのため戒厳が避けられないと述べたが、これに納得する国民はほとんどいないはずだ。

戒厳法第3条は、その理由と種類、施行日時、地域および戒厳司令官を公告しなければならないと規定している。しかし尹大統領は3日の夜、「自由憲政秩序守護のために非常戒厳を宣布する」と述べただけだ。具体的な施行日時と地域を特定せず、戒厳司令官の任命も談話の際に公告せず、違法だったとの論議が伴わざるを得ない。非常戒厳の要件と手続きを無視したという点で違憲の要素を抱えているとするのが多数の憲法学者たちの見解だ。憲法と法律に違反した行為が重大すぎたことが弾劾事由になるとの意見も少なくない。そのため、尹大統領に迫る政治的危機は、これまでとは次元が違う。与党国民の力のハン・ドンフン(韓東勲)代表はすでに尹大統領に対し離党を要請している状態だ。尹大統領の弾劾と早期の大統領選挙を狙った野党共に民主党は、「憲政破壊犯罪を座視しない」とし、4日に5大野党とともに弾劾訴追案を国会に提出した。

非常戒厳宣言は尹大統領の政治的自爆行為に他ならない。大統領秘書室長と首席秘書官らが昨日全員辞意を表明し、閣僚らも全員辞意を表明した。現在の尹大統領は孤立無援だ。政局は権力の真空状態に陥り、弾劾すべきとの民意が溢れ出た場合、国が激しい渦に巻き込まれることは明らかだ。一人の大統領の理解できない決断が、10大経済大国で平和的な政権交代を数十年にわたり行ってきた民主主義国家を政変の危険に追い込んだということは嘆かわしいことだ。戒厳宣言当日の夜、外国為替市場ではウォン相場が1ドル当たり1440ウォン(約153.4円)台に跳ね上がり、ビットコインの価格も28.9%急落した。昨日も金融市場全体が薄氷を踏む中で、証券市場はKOSPIやKOSDAQの指数がそれぞれ1.44%と1.98%下落し取引を終えた。米国や日本、英国などの主要先進国が自国民を保護するために相次いで韓国旅行に対する注意を呼びかけるなど、韓国がまたたく間に旅行危険国になってしまった。

突然の非常戒厳宣言で国民を驚がくさせ、国の体面を傷つけた尹大統領は、国民に対する謝罪を行うべきだ。多数の野党に足を引っ張られて国政を所信どおりにリードできなかった苦労を理解したとしても、民主憲政秩序に衝撃を与えようとしたことは見過ごしてはならない。国会も国会で消耗的な政争をやめ、6時間にわたる戒厳を国利と民間生活繁栄のための政治・文化の先進化のきっかけにすることを望む。政争の結果は政治家らが手にし、残った傷と恥ずかしさはなぜ国民が受けなければならないのか。今こそ不幸の歴史を断ち切るべきだ。
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