<W解説>「『メガキャリア』離陸へ」と韓国メディア=大韓航空・アシアナ航空の統合プロセス完了
<W解説>「『メガキャリア』離陸へ」と韓国メディア=大韓航空・アシアナ航空の統合プロセス完了
韓国最大の航空会社、大韓航空と同2位のアシアナ航空の統合計画をめぐり、大韓航空は今月12日、アシアナ航空の株式を取得し、子会社化したと発表した。韓国紙のハンギョレは「世界10位のメガキャリアが空を飛ぶ」と伝えた。

両社の合併をめぐっては、長い経緯がある。アシアナ航空が2015年12月期に負債が8.4兆ウォン(現レートで約9025億9100万円)に達するなど経営が悪化。2018年に本社ビルを売却するも資金繰りに苦しむようになり、韓国財閥のクモ(錦湖)アシアナグループは2019年4月にアシアナ航空の売却を発表した。2019年末に現代財閥系列のHDC現代産業開発と未来アセット大宇のコンソーシアムがアシアナ航空を買収すると発表したが、その後の新型コロナウイルスの感染拡大で、状況が買収契約を結んだ当時と大きく変わり、2020年9月、HDCはアシアナ航空の買収計画の白紙を発表した。これを受け、アシアナ航空の債権団を取りまとめる政府系の韓国産業銀行は、売却先を大韓航空に決めた。

大韓航空は2020年11月、アシアナ航空の買収を正式に発表した。大韓航空は、同社とアシアナ航空が独立した会社として運営するよりも、統合した方がシナジー効果が期待でき、雇用維持につながるほか、重複路線の効率化や新規就航地の増加、運航スケジュールの多様化、顧客の選択肢の増加、マイルの獲得や利用手段の多様化などメリットがあると強調した。

両社の統合を実施するためには14か国・地域で競争当局の審査を受ける必要があり、大韓航空は2021年1月以降、競争当局に対して、承認を受けるための申告を行った。その後、自国の韓国のほか、トルコ、台湾、ベトナム、シンガポール、マレーシア、豪州、中国の当局が承認。条件付きで承認した英国と、事前審査の対象から除外される旨を大韓航空に通知したタイ、審査対象ではないという理由で手続きを終結したフィリピンと、各国で認可を得てきた。

日本の公正取引委員会も今年2月、買収計画を承認した。日本側は当初、大韓航空がアシアナ航空だけでなく、大韓航空グループに属するLCC(格安航空会社)のジンエアーや、アシアナ航空のLCCのエアプサンとエアソウルを子会社化する場合、日本と韓国間の路線で大韓航空のシェアが高まり、競争が制限される恐れがあるとして、是正措置を求めていた。

これを受けて大韓航空は、日本と結ぶ7路線の発着枠を譲渡することで市場シェアの寡占化を是正すると提案。公取委はこうした措置の実行を前提とすれば、競争が妨げられる恐れはないと判断した。

日本が承認したことで、残るはEUと米国のみとなった。それまでおおむね順調に各国の認可を得てきていたが、EUの執行機関、欧州委員会(EC)による審査には手間取った。両社の合併について、ECは昨年5月、中間審査結果を発表し、競争の制限が懸念されるとして合併に異を唱えた。さらにECは今年2月、両者の合併を承認する条件として欧州の重複4路線の移管とアシアナ航空の貨物事業部の売却を提示した。これに伴い、大韓航空、アシアナ航空の両社が運航中のローマ、バロセロナ、パリ、フランクフルトの欧州4路線にティーウェイ航空が新規運航会社として参加することとし、アシアナ航空の貨物事業はエア・インチョンに売却を決めた。

ECはこのほど、大韓航空に対し、アシアナ航空との企業統合のための条件が全て満たされ、審査を終了したと伝達した。その後、大韓航空は米国競争当局である米司法省にECの最終承認内容を報告。同省は異を唱えなかったため、ECの最終承認をもって、事実上、合併審査は完了した。大韓航空が2020年11月にアシアナ航空の買収を発表してから4年目にしてようやく合併プロセスが終結した。

これを受け、大韓航空はアシアナ株の約63.9%を取得し、子会社化した。今月13日には、役員級の8人をアシアナ航空に派遣する人事を発表した。アシアナ航空は最大2年間、子会社として運営を続け、その後、大韓航空と統合する。既にアシアナ航空機の尾翼に描かれたロゴを除去する作業が始まるなど、統合に向けた準備が進められている。

統合した大韓航空の旅客数は、コロナ禍前をベースに、世界トップ10に入る規模となる。韓国紙のハンギョレは「『メガキャリア』離陸へ」の見出しで伝えた。
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