韓国が突如、政治的混乱に陥ったのは、尹氏が今月3日深夜に非常戒厳令を宣布したことがきっかけだ。「共に民主党」など野党は、尹氏が「憲法秩序の中断を図り、永続的な権力の奪取を企てる内乱未遂を犯した」などとして憲法違反を指摘し、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出した。14日に採決が行われ、賛成204票、反対85票で同案は可決した。これにより、尹氏の大統領としての権限は停止した。大統領職はハン・ドクス首相が代行することになった。今後、憲法裁判所が尹氏を罷免すべきかを判断し、罷免になると、60日以内に大統領選が行われる。
政治的混乱は当面続く見通しの中、外交への影響も懸念されている。対米関係に関しては、これまで尹政権の下で関係強化を図ってきた。その結果、米韓同盟を、核を基盤とする安全保障同盟に格上げし、韓国の防衛能力を画期的に高めるなど成果を上げた。日米韓3か国の連携も一層強まり、北朝鮮のミサイル発射情報を即座に共有する仕組みが実現したほか、サイバー分野などを含む領域横断の共同訓練も始まるなど、3か国の安全保障協力は軌道に乗り始めていた。11月の米大統領選でトランプ氏が当選を果たした際、尹氏はトランプ氏と電話で会談した。当時、尹氏は日米韓3か国の連携について言及。「今後、韓米同盟が安全保障や経済など、あらゆる領域にまたがる緊密なパートナーシップに繋がるよう取り組みたい」と述べた。これに対し、トランプ氏は「米韓が良好な協力関係を維持することを期待している」と応じた。また両氏は、軍事的挑発を繰り返す北朝鮮についても意見交換し、憂慮を表明。北朝鮮問題について協議の必要性で一致していた。
しかし、尹氏による「非常戒厳」の宣布とそれによる国内の政治的混乱、そして尹氏に対する弾劾訴追案の可決により、米韓関係の先行きにも不透明感が増している。
トランプ氏は16日、就任を控え記者会見を行ったが、日本や中国、北朝鮮の首脳について言及した一方、韓国の首脳については触れなかった。韓国の公共放送KBSは「(韓国は)事実上、外交では停止状態に陥っている中、韓国や朝鮮半島の安全保障に関わる懸案は先延ばしにされる可能性もある」と懸念を示し、「トランプ次期大統領は、既に中国や日本の大使を指名しているが、韓国の大使を指名していないことからもその傾向がうかがえる」と指摘した。
トランプ氏は、国際秩序を支えることよりも、自国の利益を優先するとされている中、韓国紙のハンギョレは18日の社説で「韓国外交がまひしている間、日本は1か月後に就任するトランプ次期大統領と素早く連絡を取り、『トランプリスク』を減らそうとしている」とし、故安倍晋三元首相の昭恵夫人ら、トランプ氏と関係の深い人物が面会していることを指摘した。社説はこうした動きと対比させて韓国の現状に危機感を示し、「ハン・ドクス大統領権限代行とチョ・テヨル外交部長官は、以前のような独善的姿勢を捨て、国会と誠実に意思疎通を図り、『超党的支持』に基づいて重要な外交課題を解決しなければならない」と主張した。
チョ外交部長官は18日に開いた海外メディア向けの記者会見で、尹氏による非常戒厳の宣布は、トランプ氏との意思疎通に一定の制約を生じさせ、双方の政治的勢いを損ねたと認めた。その上で、米韓同盟と日本との友好協力関係を維持し、日米韓3か国協力体制が続くよう積極的に努力する考えを示した。
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