<W解説>北朝鮮の「IT戦士」が稼いだ金が核・ミサイル開発の資金源に?身分偽り米企業などに遠隔勤務
<W解説>北朝鮮の「IT戦士」が稼いだ金が核・ミサイル開発の資金源に?身分偽り米企業などに遠隔勤務
北朝鮮のIT技術者らが身元を偽って米企業に就職し、2017~23年に8800万ドル(約134億3000万円)を稼いでいたことがわかった。米司法省は今月12日、身分を偽って遠隔勤務を行い、不法な収入を得たことは制裁に違反するなどとして、北朝鮮国籍の14人を起訴したことを明らかにした。米当局は、売上金が核・ミサイル開発計画の資金源になったとみている。

米司法省の発表によると、14人は北朝鮮当局が運営し、中国吉林省延吉やロシア極東ウラジオストクに拠点を置くフロント企業2社に勤務。事前に窃取・購入した米国民の個人情報を使って米国のIT企業などの求人に応募し、リモート勤務で業務をこなし報酬を得ていた。米国で働いているように装うため、米国内の協力者にパソコンを用意させ、このパソコンを経由して仕事の情報をやり取りしていた。フロント企業2社は少なくともIT技術者130人を動員していたとみられている。これら技術者を組織内で「IT戦士」と呼び、ボーナスや賞品で業績を競わせていたという。司法省は「北朝鮮は世界中の企業に何千人もの熟練したIT技術者を雇用させ、収益を獲得しようとしている」と注意を呼び掛けている。

司法当局はフロント企業の代表ら北朝鮮国籍の14人を米国による制裁措置違反などの罪で起訴した。国務省は14人に関する情報提供者に対し、最大500万ドル(約7億6000万円)の懸賞金を出すと発表した。

米国はこれまで、国内企業に対し北朝鮮技術者の雇用を防ぐため、採用予定者の徹底した身元調査や、雇用者の口座と住所の入念な確認を求め、身分を偽った北朝鮮のIT技術者に対して注意を呼び掛けてきた。しかし、手口は巧妙化しており、人工知能(IT)を使った高度なものも確認されるなど、対策は難しくなってきている。今年7月には、米国内のセキュリティー企業が騙されて技術者を雇用していた。8月には、IT技術者の就職を仲介していた人物が逮捕された。

一方、韓国は昨年、北朝鮮IT技術者による外貨稼ぎに関与したとして、北朝鮮国防省傘下のIT企業と、朝鮮労働党軍需工業部傘下のIT企業、IT・サイバー分野の教育機関の計3団体と、個人7人を独自制裁の対象に指定した。対象の教育機関は北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記の妻、リ・ソルジュ(李雪主)氏も過去に通っていた、芸術教育分野でも有名な機関。制裁対象の指定当時、韓国の外交部(外務省に相当)は「外貨稼ぎを直接遂行する組織や人材だけでなく、養成機関や協力者まで包括的に制裁することで、活動全般を制約する効果が期待できる」と意義を強調した。

日本でも警察庁が今年3月、北朝鮮のIT技術者が、中国など外国にいながら日本人になりすまして日本企業からソフトウェアやアプリの政策などの業務を受注して報酬を得ている疑いがあるとして注意を呼び掛けた。ソフトウェアやアプリの制作などの仕事を通常より低い金額で請け負っているとされる。警察庁は当時、サイトの登録名義と報酬を受け取る口座の名義が異なる場合や、同じ身分証で複数のアカウントを作成しているなどのケースに注意を呼び掛けた。北朝鮮に資金が流れることを認識した上で仕事を発注した場合、企業側が外為法などに違反する恐れがあることも指摘した。

北朝鮮のIT技術者は1人で年間30万ドル(約4578万円)稼ぐ例もあるとされるが、セキュリティー教育などを手がける米ノウビフォーによると、これらIT技術者は劣悪な環境に置かれ、賃金のほとんどを搾取されるという。賃金は資金洗浄された後、北朝鮮の指示役に送られているとみられている。

また、国連安全保障理事会北朝鮮制裁委員会の専門家パネルは2019年以降出している、北朝鮮のIT技術者についての報告の中で、技術者が得た収入が北朝鮮による核・ミサイル開発の資金源になっていると指摘している。
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