政局の荒波の中で外国からの信頼度が急落すると同時にドル/ウォンの為替レート急落にともなう資本流出が大きくなり、ついに外国為替危機に直面するという最悪のシナリオについても懸念されている。すでに国内外の主要機関をはじめ、韓国政府も来年の経済成長率を1%台と予測している状況で、国内の政治リスクが大きくなるほど経済が受ける打撃も大きくならざるを得ないと指摘されている。
政界と官僚などによると、共に民主党は韓大統領権限代行に対する弾劾訴追案(職務放棄・内乱同調)を27日の国会本会議で議論するとけん制した。ただし、韓権限代行が「憲法裁判官を任命しなかった場合」を前提とした。
もしも韓権限代行に対する弾劾案が実際に可決された場合、大統領権限代行は次順位の国務委員であるチェ・サンモク(崔相穆)経済副首相兼企画財政部長官が任命されることになる。現憲法が制定されて初めてのことだ。
特に野党は、現政権がふたつの特検法(内乱一般特検法・金大統領夫人特検法)を拒否した場合、崔副首相さえも弾劾対象になりうるとしている。仮にそうなった場合、経済の司令塔の役割が崩れる恐れがある。
崔副総理は国会企画財政委員会緊急懸案質疑で12月3日の非常戒厳令発布事件の責任を負い辞任するとの意向を明らかにしたが、現在の経済状況を安定的にコントロールした後に辞任すると述べた。崔副総理は「私個人の去就表明が外信に報道された場合、対外的な信任度にマイナスの影響を与えかねないという公職の重みも私を思いとどまらせている」と述べた。
これは経済の司令塔が不安定になった場合、外国人投資家などを中心に不信感が高まり、外国人の投資心理の萎縮と資本流出の懸念が現実化する可能性があることを意味している。
専門家らはこのような政治的不安定により、来年度の経済成長率が0%台に落ちる可能性についても警告している。韓国銀行は最近、来年の経済成長率の予想値を1.9%と発表したが、これは弾劾政局が始まる前の値だ。その上、高い課税率を予告しているトランプ次期政権の2期目の発足まであと1か月を切っている。
保守的な韓国政府でさえ、来年の成長率を心理的な成長防衛線である2%以下と見積もっている。先立って崔副総理は「最近、政治的な状況のために消費が萎縮しており、通常の不確実性も下ぶれリスクがある状況なので、潜在成長率よりを下回る可能性が大きいとみられる」と述べている。韓国の潜在成長率は通常2%程度だが、1%台後半の成長率になると見通している。
スクミョン(淑明)女子大学経済学部のシン・セドン名誉教授は「内乱・弾劾の政局が始まる前にもすでに1.9%との見通しが出ていたので、今回の政治的な不安定を反映した場合には少なくともさらに0.5%は下落すると見なければならない」と述べ、「政局がさらに悪化した場合、トランプリスクにともなう輸出鈍化も加わり1%を切る可能性もある。事態を収拾するべき局面で(権限代行が)弾劾されたとすれば、どの投資家が韓国を信じて投資するだろうか」と述べた。
1980年以降、成長率が2%未満を記録した年は、第2次オイルショックが起きた1980年(マイナス1.6%)と通貨危機当時の1998年(マイナス5.1%)、世界金融危機が起きた2009年(0.8%)、新型コロナウィルスのパンデミック期間に当たる2020年(マイナス0.7%)と2023年(1.4%)の5回のみだ。
ヨンセ(延世)大学経済学部のキム・ジョンシク名誉教授は「外国から見た場合、韓国経済の信頼度が低く不安感が高いため、為替レートの急落と資本流出に続く通貨危機が起きる可能性がある」と指摘し、「政治的不安定が続いた場合、来年の成長率は1%半ばかそれ以下まで下落するだろう」と述べた。
ハンソン(漢城)大学経済学科のキム・サンボン教授もやはり「すでに韓国は6年から7年間にわたって長期的な低成長が続き、政治の不安定のために成長率は1.6%まで下がるおそれがある」と述べ、「来年の初めにも11兆6000億ウォン(約1兆2600億円)規模の予算を編成するというが、上半期の一時的な効果に終わってしまう「朝三暮四式」の対策に過ぎない。与野党と政府が経済分野だけでも協力して解決しなければならない時だ」と強調した。
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