もともとソウル市は、2032年の夏季五輪を北朝鮮の首都・ピョンヤン(平壌)と共同開催することを目指していたが、2021年6月に国際オリンピック委員会(IOC)がオーストラリアのブリスベンを開催地として総会に諮ることを決め、招致は失敗に終わった。翌月、IOCは32年五輪をブリスベンで開催することを正式に決定した。
ソウル市は36年五輪の単独開催を実現することに目標を変え、呉氏は2022年10月、ソウルで開かれた国家オリンピック委員会連合会(ANOC)の総会に出席するため来韓したIOCのトーマス・バッハ会長と会談。ソウル市が36年夏季五輪の招致に取り組む意向を表明した。その後、呉氏はIOC本部のあるスイスのローザンヌを訪れ、国際社会に向けて、招致の意思を正式表明した。今夏に開催されたパリ五輪も視察し、その後、自身のSNSで、パリを流れるセーヌ川と、ソウルを流れるハンガン(漢江)を比較し、「セーヌ川よりもはるかにきれいで秀麗な漢江は、五輪が開催されれば世界から注目を集めるだろう」とアピールした。
ソウル市は「リサイクル五輪」を掲げており、五輪開催のために新たに競技場を建てることはしないとしている。既存の競技場を活用するか、今夏のパリ五輪と同様、既存の空間に観覧席を含めた臨時競技場を設置する計画を打ち出している。
また、韓国メディアによると、韓国スポーツ科学院は2024年5~11月、「2036ソウル五輪招致に向けた事前妥当性調査」を実施。その結果、費用対便益の割合(B/C)は経済的妥当性が確保されると判断される1を上回り、1.03だったという。ソウル市は、開催費用を5兆833億ウォン(約5518億円)と算出。これは2000年以降開かれた五輪の費用を大きく下回る水準だとしている。ソウル市はこの調査結果を含む開催計画書をこのほど、大韓体育会(韓国オリンピック委員会)に提出した。
呉市長は12月、自身のSNSに「ソウルオリンピック、本格的に取り組む。現場実態調査を皮切りに、本格的な準備が始まる」と投稿し、招致実現に向けて改めて意欲を示した。その上で、「事前妥当性調査の結果、経済的妥当性は確実に立証された。持続可能なオリンピック、都市と環境が調和を成すオリンピック、そしてスポーツを通じて皆がつながる世界は、ソウルオリンピックが見せることができる価値だ」とアピール。「ソウルで繰り広げられるその輝かしい未来に共に期待し、皆の心を集めていく」とした。
2036年五輪には、韓国のほか、インドやインドネシア、トルコなどが招致に関心を示している。中でもインドは、2023年10月にモディ首相がインド・ムンバイで開かれたIOC総会で直接、IOC委員を前に36年五輪の招致を目指す考えを示した。そして昨年11月、インドオリンピック委員会(IOA)は、36年五輪の開催地として立候補することを正式に表明した。開催都市は、モディ首相の出身地である西部グジャラート州最大の都市、アーメダバードが有力視されている。開催されれば、インドでは夏冬を通じて初めてとなる。新興・途上国「グローバルサウス」の盟主を自任するインドとしては、五輪開催により、国力とさらなる存在感の向上につなげたい思惑がある。36年五輪招致を目指す韓国にとって最大のライバルとなりそうだ。
今後、激しい招致合戦が繰り広げられることが予想される中、ソウル市民、韓国国民の後押しは心強い。市は昨年7~8月にかけ、市民500人を含めた全国1000人を対象にアンケート調査を行った。その結果、市民の85.2%、全国の81.7%が招致に賛成の意を示した。市は、こうした世論を追い風に、招致活動を本格化させる方針だ。
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