<W解説>専門家が被害拡大の要因と指摘する滑走路外の構造物=韓国旅客機事故
<W解説>専門家が被害拡大の要因と指摘する滑走路外の構造物=韓国旅客機事故
韓国南西部のムアン(務安)空港で乗客乗員179人が死亡した旅客機事故をめぐり、海外の航空専門家らは、機体が滑走路先に設置されたコンクリート製の構造物に衝突したことが被害を増大させた要因との見方を示している。この構造物は旅客機を滑走路に誘導するアンテナの一種、ローカライザーを支えるために設置されていた。しかし、韓国の公共放送KBSが伝えたところによると、ローカライザーの下部が硬いコンクリート構造になっているのは珍しいという。事故機はこの構造物に衝突した直後に炎上した。搭乗者181人中、生存者はわずか2人で、韓国で発生した旅客機事故で最大の被害をもたらした。英国のニュース番組に出演した航空専門家は「滑走路から200メートル離れた場所に強固な構造物が存在するなど、これまで見たことがない」とし、「本来ならこうした強固な構造物はあってはならない位置だ」と指摘した。一方、国土交通部(部は省に相当)は先月31日、構造物の位置に問題はなかったとの認識を示した。

乗客・乗員181人が乗ったバンコク発のチェジュ(済州)航空の旅客機は、先月29日午前8時半ごろ、務安国際空港に接近。管制塔が着陸許可を出した後、旅客機のパイロットはバードストライク(鳥の衝突)が起きたと伝えた。機体は救助を求める遭難信号を出し、1度目の着陸は「ゴーアラウンド(やり直し)」となった。何らかの原因で車輪が正常に作動せず、2度目は胴体着陸を試みたが失敗。機体は滑走路を離脱して外壁に衝突し、炎上した。

この事故で、乗員・乗客179人が死亡。韓国で発生した旅客機事故としては最大の被害、また、韓国機の事故としては、1997年に229人が死亡した大韓航空グアム墜落事故以来の人命被害が発生した。現場の状況について、韓国紙の朝鮮日報は「文字通り修羅場だった。空港の外壁に衝突した旅客機は胴体後部と尾翼の一部だけ何とか形が分かるほどしか残っていなかった。真っ二つに割れた機体の全部は完全にバラバラの状態だった。遺体の回収作業を行っている救助隊員らが『これほど残酷な現場は生まれて初めて見た』と口々に語るほどだ」と伝えた。

済州航空のキム・イベ社長は先月29日、ソウルのキンポ(金浦)空港近くのホテルで記者会見し、「事故で亡くなった方々のご冥福を祈り、ご遺族に深くおわび申し上げる」と謝罪した。事故原因についてキム社長は「現時点ではわかっていない」とした上で、「責任を痛感している」と述べた。

空港近くの体育館には、先月30日から犠牲者を追悼するための焼香所が設けられた。訪れた人たちは、花や線香を手向けたり手を合わせたりして悼んでいる。現在、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の権限を代行しているチェ・サンモク経済副首相兼企画財政部(部は省に相当)長官も同日、弔問に訪れ、弔問録に「亡くなった179人を記憶し、より安全な国をつくることに全力を尽くします」と記した。

今回の事故の原因としては、「バードストライク」や「ランディングギア(降着装置)の誤作動」などが指摘されており、韓国政府の事故調査委員会は、旅客機の製造元である米国のボーイングなどと合同で調査を進めている。また、国土交通部は先月30日、旅客機のブラックボックスを分析機関に送った。今後、速度や高度などの飛行データを記録した「フライトレコーダー」と、操縦室内の音声を記録する「ボイスレコーダー」を分析して、事故直前の状況を確認する。

こうした中、韓国メディアは、滑走路近くにある航空機を誘導する「ローカライザー」の構造を問題視する専門家の見解を相次いで報じている。事故が起きた務安空港のローカライザーは下部にコンクリート製の構造物が設置されており、この構造物は滑走路の端から約200~300メートル離れた場所にある。韓国メディアによると、航空宇宙を専門に扱う英国の週刊誌「フライト・インターナショナル」編集者のデイビッド・リアマウント氏は先月30日、英スカイニュースの取材に応じ、「航空機が壁に激突していなければ乗客は助かった可能性が高い」との見方を示した。その上で「激突していなければ、柵を突き破って道路を通り過ぎ、隣接する空き地で停まっていたはずだ。航空機がスピードを落として停止するのに必要な空間は十分にあった。柵を突き破る際に多少の被害は出ただろうが、それでも乗客は助かっただろう」と指摘した。韓国紙の朝鮮日報によると、リアマウント氏は英空軍でパイロット兼インストラクターを務め、英王立航空学会で最優秀賞を2回受賞した航空分野の権威。

一方、聯合ニュースによると、務安空港は昨年、ローカライザーが耐用期限(15年)を迎えたため、交換するとともに、基礎を補強したという。公共放送KBSはローカライザーの下部が硬いコンクリート構造になっているのは珍しいと指摘している。一方、国土交通部は、先月31日、この構造物は、航空機が滑走路をオーバーランするなどの事態を想定して設けられる緩衝区域の外にあると強調。務安空港の同区域の長さは199メートルで、最低90メートルとする国際基準を満たしており、構造物の位置に問題はなかったとの認識を示した。
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