尹氏は先月3日深夜、「非常戒厳」を宣言した。当時、尹氏は宣布理由について、最大野党「共に民主党」が議席の過半数を握る国会を利用して国政をまひさせており、「憲政秩序を守るため」などと説明した。戒厳令の発出は1987年の民主化以降初めてのことだった。
だが、戒厳令は国会議員の過半数が解除を求めた場合、大統領はこれに応じなければならず、発令直後、国会で本会議が開かれ、出席議員の全員が解除に賛成。尹氏はわずか6時間で非常戒厳を解いた。
野党は、尹氏が非常戒厳を宣布したことは内乱の疑いがあるとして告発。高位公職者捜査処(庁、公捜処)などでつくる合同捜査本部が捜査に乗り出した。韓国の刑法87条は、国家権力を排除したり、国憲を乱したりする目的で暴動を起こした場合は内乱罪で処罰すると規定する。最高刑は死刑。韓国の憲法84条は「大統領は、内乱または外患の罪を起こした場合を除き、在職中に刑事上の訴追を受けない」と規定しており、現職大統領には不逮捕特権があるものの、内乱罪は例外のため、尹氏を逮捕・起訴することは可能だ。
今月3日、合同捜査本部は尹氏に対する拘束令状を執行するため大統領公邸に入った。しかし、建物前で大統領警護処(庁)がこれを阻み、にらみ合いが5時間以上続いた。結局、捜査本部はこの日の執行を断念した。公捜処は、大統領警護処による警護が続く限り、令状の執行は困難と判断。4日、大統領の権限を代行しているチェ・サンモク経済副首相兼企画財政部長官に対し、警護処などが拘束令状の執行手続きに協力するようチェ氏が指揮してほしいと要請した。
一方、尹氏側は合同捜査本部が拘束令状の執行を試みたことは、特殊公務執行妨害および致傷、特殊建造物侵入、軍事基地および軍事施設保護法違反の疑いがあるとし、5日、同捜査本部の捜査官ら150人を刑事告発する方針を明らかにした。韓国メディアによると、尹氏側は「公捜処は警察に対する捜査指揮権がないにも関わらず、3日に警察特別捜査団を指揮し、大統領に対する違憲・違法な令状執行を試みた」と主張。「軍事施設保護区域施設である正門を壊して侵入し、違法な令状執行を阻止する警護処職員に暴行して一部に傷害を負わせた」とした。
連日、大統領公邸の近くでは、尹氏の支持者と、大統領の拘束を求める人たちの双方による集会が開かれており、5日も雪が降りしきる中、多くの人が集まり、双方が声を上げた。
韓国メディアは、捜査に協力しない尹氏の姿勢を一様に批判している。韓国紙の東亜日報によると、与党「国民の力」の議員からも非難の声が上がっているといい、同党所属のキム・サンウク議員は3日、同紙の電話取材に「大統領が捜査に協力せず、取るに足りない法律知識で卑怯にも隠れている。大統領として正々堂々と捜査を受けるという約束を守らなければならない」と話した。
また、韓国紙の朝鮮日報は4日の社説で、国内での政治的混乱が長引くことによる韓国の世界での信頼低下を懸念。「米CNNや英BBCなど世界の主要メディアはこの日(3日)、尹大統領逮捕をめぐる現場での混乱をリアルタイムで中継した」とした上で、「戒厳令当日は韓国軍による国会議事堂進入の様子もリアルタイムで世界に伝えられたが、その時と同じく韓国の国家信頼度はまたも大きな打撃を受けたはずだ。その影響で今後、国の信用等級まで下がれば本当に大変なことになる」と指摘した。
拘束令状の期限は本日6日まで。韓国紙のハンギョレは4日の社説で、「内乱事態は、内乱の首謀者を処罰しなければ決して終わらない。『尹錫悦断罪』に国の未来が懸かっている」と主張した。
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