<W解説>韓国・尹大統領の逮捕・弾劾の賛成派と反対派によるデモで生じた深刻な問題
<W解説>韓国・尹大統領の逮捕・弾劾の賛成派と反対派によるデモで生じた深刻な問題
先月「非常戒厳」を宣言した韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の逮捕・弾劾の賛成派と反対派による大規模な集会がソウル市内で毎週末に開かれている中、集会による騒音、参加者が捨てたごみ、交通渋滞など、市民生活を脅かす様々な問題が生じている。韓国紙の朝鮮日報は、集会が行われた場所近くにあるコンビニの前に高く積み上がったカップ麺の容器の写真などとともに深刻な状況を伝えた。

尹氏が「非常戒厳」を宣言したのは先月3日深夜のことだった。非常戒厳は韓国憲法が定める戒厳令の一種。戦時や事変などの非常事態で、軍事上、必要となる場合や公共の秩序を維持するために大統領が発令するもの。行政や司法の機能は軍が掌握し、言論・出版・結社の自由を制限することも認められる。戒厳令の発出は1987年の民主化以降初めてのことだった。

宣言を受け、武装した戒厳軍の兵士がガラスを割って国会議事堂に突入。軍事政権時代を連想させる事態に、国会前には多くの市民が集まり、戒厳に反対するシュプレヒコールを上げたほか、軍の車両を取り囲むなど騒然とした。

だが、戒厳令は国会議員の過半数が解除を求めた場合、大統領はこれに応じなければならず、発令直後、国会で本会議が開かれ、出席議員の全員が解除に賛成。尹氏はわずか6時間で非常戒厳を解いた。

「共に民主党」など野党は、尹氏が「憲法秩序の中断を図り、永続的な権力の奪取を企てる内乱未遂を犯した」などとして憲法違反を指摘し、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出した。先月14日に採決が行われ、賛成204票、反対85票で同案は可決した。これを受け、尹氏は職務停止となり、現在、チェ・サンモク経済副首相兼企画財政部長官が大統領の権限を代行している。

また、野党は、尹氏が非常戒厳を宣言したことは内乱の疑いがあるとして告発。高位公職者捜査処(庁、公捜処)などでつくる合同捜査本部が捜査を進めている。今月3日、合同捜査本部は尹氏に対する拘束令状を執行するため大統領公邸に入った。しかし、建物前で大統領警護処(庁)がこれを阻み、にらみ合いが5時間以上続いた末、結局、捜査本部はこの日の執行を断念した。

合同捜査本部は、裁判所に令状を再請求し、7日に認められた。尹氏の弁護団は、拘束令状について、合同捜査本部には捜査権限がなく無効だと主張している。

大統領公邸のあるソウル市ヨンサン(龍山)区ハンナムドン(漢南洞)一帯では尹氏の逮捕・弾劾の賛成派と反対派による集会が開かれており、特に毎週末には大規模なものとなっている。こうした中、集会の参加者が捨てたごみや騒音、交通渋滞などが深刻な問題となっており、市民らを悩ませている。朝鮮日報によると、集会場所近くにあるコンビニの店員は同紙の取材に「デモのせいで、ごみの量が通常の20倍は増えた。(店の)外のテーブルで酒をたくさん飲む人たちもいる」と話した。ソウル市によると、大規模集会が行われるようになって以降、漢南洞がある龍山区の1日のごみの収集量は平均593トンから610トンに増えたという。また、近くに住む住民の一人は同紙の取材に「夜11時まで拡声器で叫んでいるので休むことができない」と嘆いた。さらに、韓国メディアのイーデイリーによると、大統領公邸近くのミュージカル公演会場を訪れた観客の一人は同メディアの取材に、「公演会場の近くで集会があるということは知っていたが、(1車線しか)通過できないとは知らなかった」とし、「車両の通行に影響を及ぼさないよう、集会を管理してほしい」と話した。朝鮮日報は「尹大統領の逮捕状が発布されて以降、大統領公邸のある漢南洞一帯は閑静な住宅街から『大韓民国デモ1番地』へと変貌した」と伝えた。

事態を受け、ソウル市は管轄の警察署に対し、事前届け出の範囲から外れた徹夜デモや、道路全体を占拠する行為について、集合時間を遵守させるなどの対処を文書で求めた。また、交通障害が発生していることから、警察庁、交通運営機関などと協力して、市内バスを迂回(うかい)して運行させることや、地下鉄は現場付近の駅を通過するなどの対応を取ることを決めた。聯合ニュースによると、同市の関係者は「近隣の学校に登下校する小中学生の安全も脅かされている状況」とし、一般市民が被害を受けないよう、関係機関の積極的な対処を呼び掛けたという。
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