韓国の旧正月「ソルラル」は1年の始まりを祝う名節として、旧暦のお盆「チュソク(秋夕)」とともに二大名節にあげられる。旧正月の伝統的な過ごし方といえば、親戚や近所の人同士が集まって「セベ(歳拝)」と呼ばれる挨拶を交わす。子どもたちにとっては挨拶の後にもらえるお年玉「セベットン」が楽しみの一つだ。「チャレ(茶礼)」と呼ばれる祭事も行われ、儀式の際には「チャレサン(茶礼床)」と呼ばれる神や先祖への特別な供養物が用意される。
また、日本は年末に歳暮を贈る習慣があるが、韓国はソルラルに合わせてギフトセットを贈ることが多い。旧正月が近づくと、スーパーやデパートのほか、果物屋、肉屋といった個人経営の店にも名節ギフトが並ぶ。ギフトは生鮮食品や加工食品、日用品、生活必需品、健康食品など様々で、最近は若者と高齢層で購入傾向に違いが見られるという。
政府は9日、「旧正月名節対策」を発表した。旧正月の連休期間に高速道路の通行料を無料にすることや、消費促進を狙い、伝統市場で使える商品券を過去最高規模の5兆5000億ウォン(約6000億円)分発行。10日から1か月間、この商品券のカード型とモバイル型の割引率を10%から16%に引き上げる。また、外国人向けのショッピング・観光イベント「コリアグランドセール」を今月15日~来月28日まで実施する。
韓国では、旧正月や秋夕の名節の前からストレスがたまり、名節後に脊椎や関節に異常を感じたり、めまいや頭痛、腹痛、動悸(どうき)などの症状を訴えたりする人が見られる。こうした症状は「名節症候群」などといった名称で呼ばれる。「世界のどこにもない、韓国だけにある唯一の疾患」との声もある。名節に向け、数週間前から親戚などへのギフトの手配や、先祖供養の祭祀「チャレ」で使用する供え物の調達など忙しくなる。また、親戚付き合いなどに過度な精神的負担を感じる人もいる。「名節症候群」は特に女性に多く見られるとされる。名節の準備は女性に集中しがちで、何もしない夫に妻が愛想を尽かし、関係が急速に悪化したあげく離婚に至るケースもみられるという。「料理を食べて片付けるのを繰り返すのが果たして伝統文化か」などとして「名節を廃止してほしい」などと訴える声もある。
コロナ禍では、名節においても行動の自粛が呼び掛けられ、従来のような伝統的な名節の過ごし方も変化を余儀なくされた。だが、これまでコロナ禍で「名節症候群」に悩まされてきた人たちからは、負担が減るとして安どの声も出た。
日常が戻り、政府・与党は旧正月の連休の経済効果に期待し、27日を臨時休日にすることを決めた。これにより、25~26日の週末から28~30日の旧正月の連休まで6連休となる。
この決定に、国民の受け止めは様々だ。「旧正月の休暇が3日では短すぎるから大賛成」「いっそのこと31日(金)も休みにして、もっと長い休暇にすべきだ」などと歓迎の声が上がる一方、「連休が長くなると海外旅行に出かける人が増え、内需にあまり貢献しない」「政府は経済を混乱させておきながら、臨時公休日で支持率を上げようとしているのでは」などと効果を疑問視する声も出ている。国内消費が減る可能性があるとの懸念は自営業者から多く上がっている。
韓国ではユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が先月「非常戒厳」を宣言したことがきっかけで政治的混乱が続いている。国会では尹氏に対する弾劾訴追案が可決され、今後、憲法裁判所が尹氏の弾劾が妥当かどうかを判断する裁判が本格化する。韓国メディアのイーデイリーは、このことと関連し、「臨時公休日の指定には、局面打開を図る政府・与党の策略があるのとの趣旨の陰謀論も登場した」と伝えた。
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