<W解説>自らの弾劾審判に初出廷した韓国・尹大統領が法廷で語ったこと
<W解説>自らの弾劾審判に初出廷した韓国・尹大統領が法廷で語ったこと
韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が今月21日、憲法裁判所で開かれた自身の弾劾審判に出席した。尹氏の弾劾審判の弁論が開かれるのは3回目だが、この日は尹氏本人が初めて法廷に立った。弾劾訴追した国会側は国会封鎖の違法性を主張しているが、尹氏はこの日の弁論で全面的に反論した。

尹氏は先月3日深夜、「非常戒厳」を宣言。非常戒厳は韓国憲法が定める戒厳令の一種。戦時や事変などの非常事態で、軍事上、必要となる場合や公共の秩序を維持するために大統領が発令するものだ。戒厳令の発出は1987年の民主化以降初めてのことだった。

宣言を受け、武装した戒厳軍の兵士がガラスを割って国会議事堂に突入。軍事政権時代を連想させる事態に、国会前には多くの市民が集まり、戒厳に反対するシュプレヒコールを上げたほか、軍の車両を取り囲むなど騒然とした。

だが、戒厳令は国会議員の過半数が解除を求めた場合、大統領はこれに応じなければならず、発令直後、国会で本会議が開かれ、出席議員の全員が解除に賛成。尹氏はわずか6時間で非常戒厳を解いた。

「共に民主党」など野党は、尹氏が「憲法秩序の中断を図り、永続的な権力の奪取を企てる内乱未遂を犯した」などとして憲法違反を指摘し、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出した。先月14日に採決が行われ、賛成204票、反対85票で同案は可決した。これを受け、尹氏は職務停止となり、現在、チェ・サンモク経済副首相兼企画財政部長官が大統領の権限を代行している。

国会での弾劾訴追案の可決を受け、尹氏は憲法裁判所での弾劾審判に臨むことになった。弾劾審判では、戒厳令をめぐり違法性があるかどうかを検討し、尹氏の罷免の是非を判断する。尹氏の弾劾審判の初弁論が今月14日から始まったが、尹氏は1、2回目は欠席。14日の初弁論はオンラインでの傍聴申し込みの倍率が48.6倍に達するなど、国民の関心の高さを示したが、尹氏が欠席したため、わずか4分ほどで終了した

3回目となる21日、尹氏は紺色のスーツに、えんじ色のネクタイで法廷に現れた。尹氏は冒頭、「いくつもの憲法訴訟で業務が過重だと思うが、私の弾劾事件で苦労をかけ、裁判官に申し訳ない」と裁判官をおもんぱかった上で、「私は物心ついてから今まで、公職生活をしながら自由民主主義という信念一つを確実に抱いて生きてきた人間だ。憲法裁は憲法の守護のために存在する組織だ。だからこそ、裁判官が憲法を大切に扱ってくれることを願っている」と続けた。

尹氏には、「非常戒厳」の宣布後に、国会に軍部隊を投入し、議員らが戒厳解除要求決議を可決するのを阻むよう指示したとされる疑惑があるが、この日、裁判官から、「『非常戒厳』の宣言後、軍の幹部に対して、議場から国会議員を引っ張り出せと指示したか」と問われた尹氏は「ありません」と否定した。国会に軍を投入した理由については、尹氏側の弁護士が説明。投入したのは、亡国的な状況にあることを国民に知らせ、国民が国会前に押し寄せてくる状況に備えるためだったと説明した。

また、尹氏側の弁護士は全ての政治活動を禁じるとした戒厳布告令について、「布告令は戒厳の形式を整えるためのものであり、執行する意思がなかったし、執行することもできないものだった」などと説明した。

弁論は午後3時40分に終了したが、韓国の通信社・聯合ニュースによると、尹氏は弁論を終えた後、収容されているソウル拘置所には向かわず、軍の病院に移動した。聯合が、大統領側の関係者の説明として伝えたところによると、病院に向かったのは、普段から定期的に受けている健康診断のためで、健康状態に問題があるわけではないという。

この日、弾劾審判の弁論が開かれたソウルの憲法裁判所の周辺には、尹氏の支持者らが多数集まり混乱が生じた。交通規制が敷かれた区域もあったという。尹氏は今後も週2回のペースで開かれる弾劾審判の弁論に出席する意向を示しており、聯合ニュースは「混乱は当分の間続くとみられる」と伝えた。

弾劾の妥当性を審査している憲法裁で、裁判官9人中、6人が賛成すれば尹氏は罷免され、60日以内に大統領選が行われる。
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