<W解説>裁判所で、韓国・尹大統領の支持者らが暴徒化=現地メディアは「民主主義の否定」と強く非難
<W解説>裁判所で、韓国・尹大統領の支持者らが暴徒化=現地メディアは「民主主義の否定」と強く非難
韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領に対する逮捕状が今月19日未明に裁判所から発付された際、それに反発した尹氏の支持者らが裁判所で暴動を起こしたことが厳しい批判を浴びている。韓国の主要各紙はこの事件を取り上げ、「自由民主主義を正面から否定したのと同じだ」(中央日報)などと指摘し、関係者の厳しい処罰を求めた。

尹氏は先月3日深夜、「非常戒厳」を宣言した。非常戒厳は韓国憲法が定める戒厳令の一種。戦時や事変などの非常事態で、軍事上、必要となる場合や公共の秩序を維持するために大統領が発令するものだ。戒厳令の発出は1987年の民主化以降初めてのことだった。

だが、戒厳令は国会議員の過半数が解除を求めた場合、大統領はこれに応じなければならず、発令直後、国会で本会議が開かれ、出席議員の全員が解除に賛成。尹氏はわずか6時間で非常戒厳を解いた。

非常戒厳の宣言による政治的、社会的混乱は大きく、野党は尹氏に内乱の疑いがあるとして告発した。これまで、独立捜査機関「高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)」と警察の合同捜査本部が捜査を進め、同本部は今月15日、尹氏の身柄を拘束した。

さらに、合同捜査本部は17日、内乱を首謀した疑いなどでソウル西部地裁に尹氏の逮捕状を請求した。18日には、逮捕状をめぐり裁判所で審査が行われ、その結果、ソウル西部地裁は19日午前2時50分頃、逮捕状を発付。尹氏は逮捕された。同地裁は発付理由について、「証拠隠滅の恐れがある」と説明した。

逮捕状の発付に、尹氏の一部の支持者が激高し、ソウル西部地裁の敷地内に乱入。同地裁の外壁や窓ガラスなどを破壊したほか、警察官や報道陣らを暴行した。これにより警察官ら約40人が負傷したという。警察は10~70代までの90人を現行犯逮捕した。また、一部のユーチューバーは、暴動を生配信した。逮捕者は20~30代が多く、こうした配信により若者が先導されたとの見方もある。警察はこうした配信者についても捜査を進める方針。

大法院(最高裁)傘下の大法院行政庁のチョン・デヨプ庁長は19日、ソウル西部地裁を視察。「30年間、判事をしながら、このようなことが起きるとは思わなかった」と述べた。

現在、大統領代行を務めているチェ・サンモク経済副首相は「強い遺憾」を表明。「民主主義と法治主義を正面から傷つけた」とし、警察に対し、法に基づき厳正に捜査し、相応な法的責任を追及するよう求めた。

また、韓国の主要各紙は社説で今回の事件を非難。中央日報は、「裁判所の乱入・暴動は法治主義を全面的に否定する行為であり、決して容認されない問題だ」とし、「民主主義と法治主義が定着していない後進国でみられるような事態が、2025年の大韓民国で起きたという現実に悲痛な心情だ」と嘆いた。また、同紙は、「一部の政治家がデモ隊の暴走を抑えるどころか、むしろ扇動するような態度を見せたのは極めて遺憾だ」と非難した。

東亜日報は、「模範的な新興民主主義国家の首都の中心で起きたことだとは信じられないほど衝撃的だ」とし、「裁判所で暴れた人はもとより、暴力を扇動した人も徹底的に捜査し、厳罰に処さなければならない」と訴えた。

ハンギョレは「限度を超えた」とした上で、「裁判所の決定が気に入らないからといって暴力を使うのは、韓国社会を支える『法治』と『民主主義』を完全に破壊する行為であり、反社会的だ。社会を支えるためにも、絶対に容認してはならない」と訴え、「『12・3内乱』以降、韓国社会は岐路に立っている」と警告した。

尹氏の弁護団によると、この乱入事件には尹氏も「無念で憤る心情は十分理解するが、平和的な方法で意思を表現することを要請する」と述べたという。この発言について東亜日報は「支持者たちが起こした暴力事態について、最も重い責任を感じなければならないのは尹大統領だろう」と指摘。「尹大統領は官邸で『籠城』した時、支持者に対して『愛国市民』『熱い愛国心』云々し、逮捕反対デモを煽っていると批判を受けた。それにも関わらず、同日(19日)午後、獄中声明で『平和的な方法で意思を表明してほしい』とし、警察に『強硬な対応より寛容な姿勢』を求めた。支持者の暴力事態を警察の強硬鎮圧のせいにする発言だ」と批判の矛先を尹氏にも向けた。
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