<W解説>韓国の若き政治家が大統領選への出馬に意欲=政治的混乱下、「世代交代」の訴えは有権者に響くか?
<W解説>韓国の若き政治家が大統領選への出馬に意欲=政治的混乱下、「世代交代」の訴えは有権者に響くか?
2022年の韓国大統領選で、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の当選を支え、現在は野党「革新新党」の代表を務めるイ・ジュンソク(李俊錫)議員(39)が今月2日、記者会見し、尹氏が罷免(ひめん)されて大統領選が行われた場合、自身が出馬することに意欲を示した。尹氏をめぐっては、昨年12月に「非常戒厳」を宣言し、国会で弾劾訴追された。現在、憲法裁判所で、尹氏の罷免の可否を判断する弾劾審判が続いている。弾劾が妥当と判断された場合には、60日内に大統領選が行われる。会見で李氏は「保守も進歩(革新)も本来の価値を失ったまま自己矛盾に陥った現実を我々は見ている。もうこんな古い政治の時代を終わらせるべきだ」と訴えた。韓国の憲法では、大統領になれるのは40歳以上とされている。李氏は3月末に40歳の誕生日を迎える。

昨年12月3日の深夜、尹氏は「非常戒厳」を宣言。非常戒厳は韓国憲法が定める戒厳令の一種で、戦時や事変などの非常事態で、軍事上、必要となる場合や公共の秩序を維持するために大統領が発令するものだ。戒厳令の発出は1987年の民主化以降初めてのことだった。

だが、戒厳令は国会議員の過半数が解除を求めた場合、大統領はこれに応じなければならず、発令直後、国会で本会議が開かれ、出席議員の全員が解除に賛成。尹氏はわずか6時間で非常戒厳を解いた。

しかし、非常戒厳の宣言で韓国は政治的、社会的に大きな混乱が生じ、最大野党「共に民主党」など野党は、尹氏が「憲法秩序の中断を図り、永続的な権力の奪取を企てる内乱未遂を犯した」などとして憲法違反を指摘し、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出した。同案は可決し、尹氏は職務停止となった。尹氏は現在、憲法裁判所での弾劾審判に臨んでおり、憲法裁は6か月以内に尹氏を罷免するか、復職させるかを決める。罷免となった場合は、60日以内に大統領選挙が行われる。

こうした中、第三極政党「改革新党」所属の李俊錫議員が2日、記者会見し、仮に大統領選が行われた場合には、「役割を果たす」と述べ、立候補に意欲を示した。

李氏は2021年6月、国会議員経験がないまま当時36歳の若さで現与党「国民の力」の代表に就任し、注目を集めた。米ハーバード大でコンピューター科学と経済学を学び、卒業後はIT(情報技術)系のベンチャー企業を立ち上げた。2011年にパク・クネ(朴槿恵)元大統領から「国民の力」の前身、ハンナラ党の非常対策委員会委員に抜てきされ政界入りするも、2016年の総選挙、2018年の国会議員補選、2020年の総選挙でいずれも落選した。議員経験がないまま2021年の党代表選で勝利し、韓国の主要政党では初となる30代の党代表となった。

2022年の大統領選では、党代表として尹氏を支え、尹氏が勝利したことから李氏は政権与党の代表となった。だが、李氏は過去に性接待を受けた後に証拠隠滅を教唆したとする疑惑が取り沙汰され、同党の党員倫理委員会は、李氏を党員資格停の懲戒処分を議決。これにより、李氏は党代表としての職務執行権限が停止した。李氏はその後、党員資格停止期間中に党代表の任期満了を迎え、2023年12月、離党と「改革新党」の結成を発表。李氏は、既存の保革2大政党に不満を持つ層を取り込む「第3極の集合体」をつくろうとした。昨年4月の総選挙に出馬し、当選を果たした。

今月2日、事実上の大統領選への出馬を表明した李氏は、政治の混乱が、保守と革新の双方にあると批判し、「先進国で生まれ育った私たちの世代が韓国をアップグレードする」とし、世代交代の必要性を強調。40代で米大統領に就任したジョン・F・ケネディ氏、クリントン氏、オバマ氏らの名前を挙げ、「変化は果敢な世代交代と共に起こる」と述べた。

李氏が事実上、大統領選への出馬を表明したことについて、韓国の通信社・聯合ニュースは、尹氏が罷免されれば大統領選が行われることを念頭に「『国民の力』と最大野党『共に民主党』に対抗する『第3の候補』として存在感を確保していきたい考えとみられる」と分析。「会見の場所を国会ではなく、若者が集まるホンデ(弘大)にしたのも、こうした狙いが反映された戦略と受け止められる」と指摘した。
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