<W解説>話題沸騰のディープシーク、韓国でも省庁や企業で利用制限の動き
<W解説>話題沸騰のディープシーク、韓国でも省庁や企業で利用制限の動き
中国の新興企業「DeepSeek(ディープシーク)」が開発した生成AI(人工知能)への懸念が世界で広がる中、韓国国内でも省庁や企業で規制の動きが出てきている。ディープシークは利用者の機器情報やIPアドレス、キーボードの入力パターンなどを収集して中国国内のサーバーに保存しているとされ、セキュリティー面で懸念の声が上がっている。

 ディープシークはChatGPTやGeminiと並ぶ対話型AIサービスとして注目を集めている。先月20日に最新の言語モデル「R1」がリリースされるや、Apple(アップル)のApp Store(アップストア)の無料アプリでダウンロード数トップに。無名の中国新興企業のAIが、低コストにも関わらず米AI先端製品に匹敵する性能を持つことが明らかになり、これまでAI分野で世界をリードしてきた米国企業の優位性を脅かすとの見方から、1月27日の米国株式市場は生成AI関連株を中心に大幅に下落した。AI半導体大手エヌビディアの株価は同日、17%安となった。これは、1日の下落率として新型コロナウイルスの感染拡大初期である2020年3月中旬以来、約5年ぶりの大きさだった。そのほか、AI関連は総じて大幅安となり、アルファベットは4%安、マイクロソフトは2%安、米半導体大手ブロードコムは17%安となった。市場では「ディープシーク・ショック」との呼び声も上がった。

 ディープシークの最大の特徴は開発や運用コストの低さだ。開発費用は約560万ドル(約8億7000万円)と、米Open AI(オープンエイアイ)のChatGPTの約10分の1にも関わらず、ChatGPTに匹敵する性能があるとされる。また、開発に携わった研究者はわずか約140人で、1000人を超える「Open AI」と比べてもはるかに少ない人数だという。

 一方、中国は国家情報法により、中国企業や国民に情報活動への協力が義務付けられており、ディープシークを利用することで、中国側に情報が抜き取られる可能性が指摘されている。

 こうした懸念から、各国の企業や政府機関は利用制限などの措置を取り始めている。イタリア政府はアクセスを制限すると発表したほか、台湾も公的機関での利用を禁止した。日本は利用制限はしていないものの、政府の個人情報保護委員会は3日、利用時の注意点をホームページに掲載。個人情報を含むデータが中国国内のサーバーに保存され、中国の法令が適用されるとして注意を呼び掛けた。やはり、適用される「国家情報法」を懸念しており、同委は「ほかのサービスとは異なり、留意すべき点がある」とした。また、同委は利用にあたって、ディープシーク社のプライバシーポリシーが中国語と英語のみに対応していることから、日本語に翻訳したものをHPにアップするなどの対応も取った。これについて、林芳正官房長官は、ディープシークのプライバシーポリシーは、日本の利用者には内容の把握が容易ではない状況にあり、把握しやすくするため、個人情報保護の観点から情報提供を行ったと説明。その上で、国民に対し「ご留意いただきたい」と呼び掛けた。

 韓国は外交部(部は省に相当)と産業通商資源部が独自の判断委よりディープシークへのアクセスを遮断した。また、国営の韓国水力電子力は、今月、利用を禁止する措置を取った。こうした対応は企業にも広がっており、IT大手のカカオや通信大手のLGユープラスは業務目的でのディープシークの使用を禁止した。

 韓国の公共放送KBSが、アプリの利用実態を分析する「ワイズアップ・リテール」の発表として伝えたところによると、韓国における先月第4週の週間ユーザー数は121万人で、493万人だったChatGPTに次ぐ2位だった。

 韓国政府としてディープシークの利用自体を禁止する措置は取ってはいないが、行政安全部は4日、ディープシークをはじめとする生成AIの使用に注意を促す公文書を中央官庁や広域自治体に送った。韓国の通信社・聯合ニュースによると、公文書にはこれらのサービスを業務で利用する際に個人情報を入力することを控え、提示された結果についても無条件に信用しないよう促す内容が盛り込まれたという。

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