南東部のポハン(浦項)沖の日本海に、大量の石油と天然ガスが埋蔵されている可能性があるとの見解は、昨年6月、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が記者会見で明らかにした。尹氏は当時「世界最高水準の深海技術評価専門企業に物理探査深層分析を依頼した」とした上で、埋蔵量は「最大で140億バレルに達する」との見方を示した。これは、韓国の天然ガスの消費を最大29年、石油の消費を最大4年まかなえる量で、当時、国民の関心が高まった。
韓国は日本同様、天然資源に乏しい国で、1960年代から海底油田やガス田の探査を続けてきた。1973年の第1次石油危機を受け、当時のパク・チョンヒ(朴正熙)政権は独自の石油需給に向け、浦項市のヨンイル湾沖で海底を掘削するボーリング作業を進めた。76年に朴大統領は「浦項沖で初めて石油が採掘された」と発表し、期待が高まったが、結局、政府は翌年、「経済性がないものと判明し、ボーリングを中断した」と発表した。1990年代後半には、日本海で4500万バレル規模のガス田を発見したが、2021年で商業生産が終了した。
尹氏の発表を受け、当時「海底に眠っている資源総額は、サムスン電子の時価総額の5倍」などと報じるメディアもあったが、「韓国南東沖の石油・ガス開発は勇み足?」(通信社・聯合ニュース)、「経済性評価は時期尚早」(韓国紙・ハンギョレ)などとおおむね冷静な報道が目立った。当時、聯合ニュースは、大規模な石油・ガス埋蔵の可能性が高いと発表された鉱区について、前年に、オーストラリアの資源大手ウッドサイド・エナジーが「将来性がない」として共同探査事業から撤退していたことを報じた。ハンギョレも当時、これを報じ、「ウッドサイドの2023年の年次報告書には韓国を含め、カナダ近海、ペルー、ミャンマーなどから『もはや将来性がないため』撤退すると記されている。事業性がないと判断したため撤退すると読み取れる」と指摘した。こうした報道に対し、産業通商資源部(部は省に相当)は当時、ウッドサイドが22年6月にオーストラリアの資源大手BHPと合併し、既存の事業を整理する中で事業撤退に至ったもので、「深層評価によって将来性がないと結論を下したという解釈は事実に反する」と反論した。
また、政府が試掘の成功確率を20%程度としたことから、最大野党「共に民主党」からは「失敗の可能性が高く、税金の無駄遣いになる」との批判も上がった。
石油とガスが存在すると予想される地質構造を意味する「有望構造」7カ所のうち、まずは、最も埋蔵の可能性が高いガス田の候補地でボーリング調査が進められた。しかし、産業通商資源部は、埋蔵された石油とガスの経済性を判断する上でカギとなる「炭化水素のガス飽和度」が商用生産できるレベルでないと判断。6日、こうした見解を明らかにした。
一方、石油・天然ガスが埋蔵されるために必要な地質構造は良好であることが確認されたことから、政府は外資の誘致などを通じてさらに調査を進める考えを併せて発表。しかし、韓国メディアは「1回目の調査で成功への明確な道筋が示されなかったことから、今後、残りの6カ所の有望構造の調査も推進する勢いが弱まるとの見方が出ている」(公共放送KBS)、「事業自体が大きく動力を失うものとみられる」(ハンギョレ)などと報じている。
一方、朝鮮日報は8日付の社説で「今回の第1回ボーリングの結果はある程度予想できたものだといえる」とした上で「その結果をめぐって成功だの失敗だのと言うのは性急すぎる」と指摘。かつてノルウェーの北海油田が33回目のボーリングで油田が発見されたことなどの例を挙げながら「第1回ボーリングの結果だけで『詐欺』と言うのなら、世界のほぼすべての油田が詐欺だったことになる」とし、プロジェクトの失敗よりも、昨年、大統領自らが大々的に資源埋蔵の可能性を発表するなど、資源開発までもが政争の具とされたことを問題視した。
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