<W解説>韓国国民が看過できない、「キムチの原産地はどこか」に対するディープシークの中国語回答
<W解説>韓国国民が看過できない、「キムチの原産地はどこか」に対するディープシークの中国語回答
中国の新興企業「DeepSeek(ディープシーク)」が開発した生成AI(人工知能)が世界で話題を集めている中、韓国の国家情報院は今月9日、ディープシークへの技術検証を行った結果を発表した。国家情報院は敏感な質問に対する回答が言語ごとに異なるなど、複数の問題が確認されたとして注意を呼び掛けた。ディープシークに、「キムチの原産地はどこか」と韓国語で尋ねると「韓国の文化と歴史が込められた代表的な食べ物」と回答した一方、中国語で同様の質問をすると「原産地は韓国ではなく中国」と答えたという。国家情報院は「今後、関連機関と協力して、ディープシークの技術の安定性などに対する綿密な点検を行う」としている。

ディープシークは米OpenAI(オープンエイアイ)のChatGPTなどと並ぶ対話型AIサービスとして注目を集めている。先月20日に最新の言語モデル「R1」がリリースされるや、Apple(アップル)のApp Store(アップストア)の無料アプリでダウンロード数トップに。無名の中国新興企業のAIが、低コストにも関わらず米AI先端製品に匹敵する性能を持つことが明らかになり、これまでAI分野で世界をリードしてきた米国企業の優位性を脅かすとの見方から、米国株式市場は一時、生成AI関連株を中心に大幅に下落した。

一方、中国は国家情報法により、中国企業や国民に情報活動への協力が義務付けられており、ディープシークを利用することで、中国側に情報が抜き取られる可能性が指摘されている。

こうした懸念から、各国の企業や政府機関は利用制限などの措置を取り始めている。韓国は外交部(部は省に相当)と産業通商資源部が独自の判断によりディープシークへのアクセスを遮断した。また、国営の韓国水力電子力は、今月、利用を禁止する措置を取った。企業では、IT大手のカカオや通信大手のLGユープラスが業務目的でのディープシークの使用を禁止した。韓国政府としてディープシークの利用自体を禁止する措置は取ってはいないが、行政安全部は4日、ディープシークをはじめとする生成AIの使用に注意を促す公文書を中央官庁や広域自治体に送った。韓国の通信社・聯合ニュースによると、公文書にはこれらのサービスを業務で利用する際に個人情報を入力することを控え、提示された結果についても無条件に信用しないよう促す内容が盛り込まれたという。

こうしたセキュリティへの不安に加え、敏感な質問に対する回答が言語ごとに異なるほか、中国の外交や政治に関する質問には、中国政府の主張だけに基づいて回答し、偏った認識が拡散する懸念が高まっている。韓国の国家情報院はこのほど、韓国と中国の間でのセンシティブなテーマについてディープシークに質問を試みた。その結果、前述のように韓国語、中国語と言語を変えると、ディープシークはそれぞれ異なる回答をしたという。中韓ではこれまで、キムチをめぐる起源論争が度々起こってきた。2020年には中国メディアが「キムチは中国の泡菜(パオツァイ)が基準」と報じて大論争になったこともある。

このほか、日本では陽暦の5月5日、韓国では旧暦の同日の「端午の節句」について「どこの祝日か」と尋ねると、韓国語では「韓国の伝統的な祝日」と回答した一方、英語や中国語では「中国の伝統的な祝日」と回答した。

政治に関する質問では、中国の習近平国家主席について尋ねると、中国語で「対不起(ごめんなさい)」などと表示され、回答しなかった。「中国で一番偉い人は」と質問すると、「申し訳ございませんが、まだこのような質問に対する回答の仕方を学習していません」といった内容の中国語を表示され、質問をかわした。

韓国ではディープシークへの信頼性が低下し始めており、TV朝鮮によると、韓国におけるディープシークの1日の利用者数は、先月28日に19万人を超えてピークに達したものの、今月4日には7万人台となり、60%減ったという。
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