韓国メディアによると、10日午後6時前、大田市の小学校の視聴覚室に人が閉じ込められているとの通報があり、消防隊員らが駆け付けると、室内で8歳の小学1年の女子児童が刃物で刺され倒れているのを発見した。児童は病院に搬送されたが、その後、死亡が確認された。また、現場近くでは、手や首などを負傷した状態の同校の女性教師(40代)が発見された。女は自殺を図ったとみられ、病院で手当てを受けている。警察は女の回復を待って取り調べを進める方針。
韓国の通信社・聯合ニュースが捜査関係者の話として伝えたところによると、女は「どんな子どもでも構わない」と考えて対象を物色し、最後に教室から出てきた子どもに「本をあげる」と話しかけて視聴覚室に誘い込み、首を絞めた上で凶器を使って児童を刺したと話しているという。
女は2018年からうつ病の治療を受けており、これまで病気休暇と休職を繰り返し、昨年12月には再び6か月の休職に入った。しかし、同月中、わずか20日あまりで早期復職した。女は警察に対し、復職後に授業から排除されたことに腹が立ち、犯行に及んだとの趣旨の説明をしているという。
子どもを守る教育現場で、教師が児童を刺殺した今回の事件に、韓国では衝撃が走るとともに、強い憤りと深い悲しみが広がっている。事件が起きた小学校の柵には、死亡した女児に手向けられた花や手紙が多数置かれている。現在、内乱の疑いで拘束されているユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は、事件を受け、弁護士を通じて哀悼の意を表した。尹氏は「子どもたちが安全に遊ぶべき学校でこのような恐ろしい犯罪が発生したことは非常に悲しく残念だ」とした上で、「政府が遺族をサポートし、再発防止策を講じるために最善を尽くすと信じている」と話しているという。また、現在、大統領の権限を代行しているチェ・サンモク副首相兼企画財政部長官は、関係機関に徹底した調査と再発防止のための対策づくりを指示した。
一方、容疑者の女が、復職後に校内のパソコンを壊したり、同僚の教師に暴行を加えたりするなど、異常な行動を見せていたにも関わらず教育当局が形式的な調査をするにとどめていたことが問題視されている。韓国紙の東亜日報は、「事件直前に教育当局が学校を訪れて調査したにも関わらず、事件を防げなかったことが明らかになった」とし、「教育当局の消極的な対応で事件が起きたと指摘されている」と伝えた。
前述のように、女は昨年12月に休職に入ってからわずか20日あまりで復職した。大田教育庁は女を早期に復職させた理由について、「休職・復職関連の規定上、医師の診断書を添付し、教員が復職を申請すれば30日以内に必ず復職させることになっている。精神科専門医による『日常生活が可能』との所見が記された診断書が添付されており、これを基に復職させた」と説明している。
一方、大田を含めソウル、南西部のクァンジュ(光州)など一部の教育庁では、精神疾患を抱える教員が職務を適切に遂行できるかを審査する「疾病教員審議委員会」が運営されている。同審議委は医療関係者や法律の専門家、教育庁の職員らで構成し、診断書や学校長、医療専門家らの意見書などをもとに、精神・身体的疾患がある教員が職務を適切に遂行できるかを判断する。しかし、女が復職するにあたって審議委は開かれなかった。女のように、本人の願いにより病気休職に入った場合、委員会の審議の対象に含まれてはいないためだ。
事件を受け、イ・ジュホ社会副首相兼教育部(部は省に相当)長官は12日、全国の市・道の教育庁トップの教育監と懇談会を実施し、対応を協議した。聯合ニュースによると、イ長官は「復職時に正常な勤務が可能であるかの確認を必須にするなど適切な対策を用意する。教員に暴力など特別な行動が見られた時に緊急介入できる方策を講じる」と述べた。
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