<W解説>韓国・尹大統領の弾劾是非の決定が迫る中で発足した「大統領国民弁護団」とは?
<W解説>韓国・尹大統領の弾劾是非の決定が迫る中で発足した「大統領国民弁護団」とは?
韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の弾劾が妥当かを判断する弾劾審判の弁論期日は、今月13日で当初予定されていた日程を終了した。憲法裁判所は弁論期日の延長を決め、9回目の弁論は18日に開くことを決めた。憲法裁の判断次第では、尹氏の罷免、そして大統領選が行われるという展開にもなり得るが、こうした中、尹氏を支持する会「大統領国民弁護団」が13日、発足した。携帯電話による認証手続きを経れば誰でもオンラインで加入でき、募集開始からわずか10日で加入者は16万人に達した。

尹氏は昨年12月、「非常戒厳」を宣言した。非常戒厳は韓国憲法が定める戒厳令の一種。戦時や事変などの非常事態で、軍事上、必要となる場合や公共の秩序を維持するために大統領が発令するものだ。行政や司法の機能は軍が掌握し、言論・出版・結社の自由を制限することも認められる。戒厳令の発出は1987年の民主化以降、初めてのことだった。

宣言を受け、武装した戒厳軍の兵士がガラスを割って国会議事堂に突入。軍事政権時代を連想させる事態に、国会前には多くの市民が集まり、戒厳に反対するシュプレヒコールを上げたほか、軍の車両を取り囲むなど騒然とした。

だが、戒厳令は国会議員の過半数が解除を求めた場合、大統領はこれに応じなければならず、発令直後、国会で本会議が開かれ、出席議員の全員が解除に賛成。尹氏はわずか6時間で非常戒厳を解いた。

尹氏が突如宣言した「非常戒厳」は早期に解かれたものの、韓国社会に混乱をきたし、現在も不安定な政治状況が続いている。「共に民主党」など野党は、尹氏が「憲法秩序の中断を図り、永続的な権力の奪取を企てる内乱未遂を犯した」などとして憲法違反を指摘し、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出した。昨年12月、採決が行われ、賛成204票、反対85票で同案は可決した。これを受け、尹氏は職務停止となり、現在、チェ・サンモク経済副首相兼企画財政部長官が大統領の権限を代行している。

同案の可決を受け、憲法裁が6か月以内に尹氏を罷免するか、復職させるかを決めることになった。罷免となった場合は、60日以内に大統領選挙が行われる。

憲法裁では先月から弁論が行われており。尹氏も自ら出席して弾劾の不当性を訴えている。憲法裁では13日、弾劾審判の8回目の弁論があり、当初予定の弁論期日を全て消化したが、憲法裁は追加で18日に9回目の弁論を行うことを決めた。

韓国社会に混乱をもたらした尹氏に怒りや処罰を求める声も高まる一方、尹氏の支持率は上昇傾向にある。先月、日刊紙「アジアトゥデイ」が発表した世論調査では、尹氏の支持率は50%に達した。これは大統領選当選時の得票率48.56%を上回る数値だ。尹氏の支持が高まっているのは、最大野党「共に民主党」が国会で「数の力」を利用し、高官への弾劾訴追案を再三提出したり、政府予算を削減したことで同党への不満が高まっていることも影響しているとみられる。一方、韓国紙のハンギョレは14日、世論調査会社のエムブレインパブリック、Kスタットリサーチ、コリアリサーチ、韓国リサーチが10~12日にかけて共同で行った調査の結果を伝えた。それによると、憲法裁が「弾劾を認容し、尹大統領を罷免すべき」との回答は58%で前週より3ポイント増えた。一方、「弾劾を棄却し、(尹氏を)職務に復帰させるべき」との回答は2ポイント減って38%だったという。調査は18歳以上の男女1001人を対象に行われた。

ソウルをはじめ、韓国各地では尹氏の弾劾に賛成または反対する集会が開かれている。こうした中、今月13日、尹氏を支持する会「大統領国民弁護団」が発足した。同団体は尹氏の弁護団のソク・トンヒョン弁護士が率いる団体で、今月3日に加入者の募集を行ったところ、募集開始から10日経った今月13日の時点で16万人に達した。その後も加入者は増え続けている。韓国紙の朝鮮日報が伝えたところによると、加入者の約半数が若者だという。同紙は「尹大統領の弾劾審判宣告を前に、尹大統領支持派の結集が本格化しているとの見方が出ている」と伝えた。

13日には発足式が行われ、ソウル市内の広場に集まった加入者たちは「尹錫悦弾劾反対」「大統領を釈放せよ」などと叫んだ。これに対し、尹氏は弁護士を通じてコメントを発表。「国民弁護団の皆さまのご心配の声とご声援に感謝する。特に若者たちの夢と情熱を支持したい」などとした。

国民弁護団は今後も毎週木曜日に集会を開くことにしている。
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