ディープシークはChatGPTやGeminiと並ぶ対話型AIサービスとして注目を集めている。先月20日に最新の言語モデル「R1」がリリースされるや、AppleのApp Storeの無料アプリでダウンロード数トップに。無名の中国新興企業のAIが、低コストにも関わらず米AI先端製品に匹敵する性能を持つことが明らかになり、これまでAI分野で世界をリードしてきた米国企業の優位性を脅かすとの見方から、1月27日の米国株式市場は生成AI関連株を中心に大幅に下落した。市場では「ディープシーク・ショック」との呼び声も上がった。
ディープシークの最大の特徴は開発や運用コストの低さだ。開発費用は約560万ドル(約8億7000万円)と、米Open AI(オープンエイアイ)のChatGPTの約10分の1にも関わらず、ChatGPTに匹敵する性能があるとされる。また、開発に携わった研究者はわずか約140人で、1000人を超える「Open AI」と比べてもはるかに少ない人数だという。
一方、中国は国家情報法により、中国企業や国民に情報活動への協力が義務付けられており、ディープシークを利用することで、中国側に情報が抜き取られる可能性が指摘されている。
こうした懸念から、各国の企業や政府機関は利用制限などの措置を取った。イタリア政府はアクセスを制限すると発表したほか、台湾も公的機関での利用を禁止した。日本は利用制限こそしていないものの、政府の個人情報保護委員会は今月3日、利用時の注意点をホームページに掲載。個人情報を含むデータが中国国内のサーバーに保存され、中国の法令が適用されるとして注意を呼び掛けた。やはり、適用される「国家情報法」を懸念しており、同委は「ほかのサービスとは異なり、留意すべき点がある」とした。
韓国でも、外交部(部は省に相当)や産業通商資源部などの省庁が独自の判断によりディープシークへのアクセスを遮断した。また、国営の韓国水力電子力は、今月、利用を禁止する措置を取った。こうした対応は企業にも広がっており、IT大手のカカオや通信大手のLGユープラスは業務目的でのディープシークの使用を禁止した。大手銀行や証券などでも「ディープシーク遮断」の動きが広がっている。個人情報保護委員会は、ディープシークの個人情報の取扱いに懸念が広がっていることを受け、先月31日、同社にサービス開発や提供過程における個人情報の収集・処理方法についての質問書を送付した。また、韓国の情報機関、国家情報院は今月9日「他の生成AIサービスとは異なり、チャットの記録が転送可能であることが確認されている。個人を特定できるキービードの入力パターンを収集し、中国企業のサーバーと通信する機能がついている」と指摘した。
一方、中国外務省の報道官は今月6日の記者会見で、韓国の省庁などでディープシーク阻止の動きが出ていることを記者から問われ、中国政府はデータのプライバシーとセキュリティを非常に重視しており、法律に従って保護していると強調した。
韓国の個人情報保護委員会は、ディープシークに対し、問題が是正されるまでサービスを暫定的に中断して改善・補完することを勧告。ディープシークはこれを受け入れる形で15日から韓国国内での新規ダウンロードを停止した。韓国紙の東亜日報は、「海外の多くの国々と機関がディープシークの使用を規制している中、ディープシーク側で、独自に使用制限措置を取った初めての事例だ」と伝えた。一方、既にダウンロード済のユーザーは引き続き利用できる。同委は個人情報を入力しないなど、慎重な利用を呼び掛けている。
ディープシークは韓国の法律に基づく改善・補完を行った後、サービスを再開する方針だ。同社が韓国でサービスを中断している間、委員会は引き続きディープシークの個人情報処理の実態を綿密に確認する。韓国紙の中央日報は「昨年、委員会がOpenAI、グーグル、マイクロソフトなど主要生成AI事業者を対象に実施した個人情報処理の実態調査は約5か月かかった」と指摘。今回のディープシークに対する確認期間は「最短、数か月ほどと予想される」との見方を伝えた。
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