<W解説>訪問客の旅行談が影響?北朝鮮が5年ぶりに門戸を開いた北東部・羅先の観光中断
<W解説>訪問客の旅行談が影響?北朝鮮が5年ぶりに門戸を開いた北東部・羅先の観光中断
北朝鮮は先月、新型コロナウイルス禍以降、5年ぶりに世界各国からの団体観光客の受け入れを、北東部の経済特区、ラソン(羅先)に限って再開したが、一転、わずか3週間でこれを中断したことがわかった。詳しい理由は不明。

北朝鮮は2020年1月末、新型コロナの世界的大流行を受けて早々と国境を封鎖。ウイルスや感染者の流入を徹底的に阻止しようとした。当時、世界各国に感染が広がる中、真偽は不明なものの北朝鮮は長らく国内に感染者は一人もいないと主張し続けた。しかし、2022年5月、感染者の確認を初めて発表した。北朝鮮の国営、朝鮮中央通信は当時、「2020年2月から2年3か月間にわたって強固に守ってきた非常防疫戦線に穴が開く国家最重大の非常事件が起きた」と報道。新型コロナの変異株オミクロン株の感染者が出たと伝えた。それまで、「感染者ゼロ」を主張し続けてきただけに、この発表は世界に衝撃を与えた。

徹底した国境管理で、人・物の出入りを厳しく制限してきた北朝鮮だが、2023年7月の朝鮮戦争の休戦協定の締結から70年の記念行事にロシアの国防相や中国共産党の政治局員らを招くなど、徐々に人の往来を再開。同年8月には、北朝鮮国営の高麗航空がピョンヤン(平壌)と北京の間、ロシア極東のウラジオストクの間で運航を再び始めた。北朝鮮が国際航空便を運航するのは約3年半ぶりのことだった。当時、旅客機には国境封鎖で中国やロシア国内に足止めされていた北朝鮮の住民が、帰国するために続々と搭乗した。そして、同年9月、コロナ禍以降、初めて外国人の入国を許可。背景には、最終的に外国人観光客やビジネスマンの入国を正常化することで、経済活性化につなげようとする狙いがあったものとみられている。コロナ禍前の2018年に北朝鮮を訪れた外国人観光客は約20万人に上っていた。

北朝鮮はその後、観光客の入国に関しては、首都・ピョンヤン(平壌)など一部地域で、北朝鮮が親密な関係を築いているロシアに限り、団体観光客の受け入れを許可してきた。そして先月、羅先経済特区に限り、米国人と韓国人を除き、世界からの外国人観光客の受け入れを再開した。羅先は中国、ロシア国境に対峙する経済特区。自然豊かな観光都市として知られ、コロナ禍前は中国やロシアなどから多くの観光客が訪れていた。5年ぶりの受け入れ再開を受け、フランスやドイツ、英国など、西側諸国からも先月、団体ツアー客が現地を訪れた。その後、現地を訪れた観光客の旅行談が欧米メディアなどを通じて報じられた。ドイツ人の旅行インフルエンサーは、米経済メディアの取材に「北朝鮮の人々が貧困を隠そうとしないことに驚いた」と話した。英国の公共放送BBCは今月1日、「北朝鮮観光が再開されて以降、初めて北朝鮮に行ってきた英国人たち」と題して、現地を訪れた観光客や旅行会社の関係者にインタビューした模様を報じた。取材に応じた、英国人ユーチューバーは「北朝鮮は統制の厳しい国だということは知っていたが、実際に経験した統制のレベルは想像を超えていた。トイレに行くときでさえ、ガイドに報告しなければならなかった。世界のどこにも、こんな経験をした国はなかった」と語った。また、このユーチューバーが滞在中に訪れた施設で、訪問者ノートに「世界の平和を願います」と記したところ、ガイドが近づいてきて「内容が不適切だ」と指摘されたという。ツアーリーダーの一人は「まるで修学旅行をしているようだった。ガイドがいなければ外に出ることもできなかった」と話した。

羅先を対象に、5年ぶりに世界からの観光客の受け入れを再開した北朝鮮だったが、複数の旅行会社が5日に明らかにしたところによると、北朝鮮は羅先への観光客の受け入れを一時的に中断することを決め、通知してきたという。フランスのAFP通信などによると、中国・北京にある北朝鮮専門旅行会社「高麗ツアーズ」は「これは前例のない状況だ。状況を把握するために努力しており、新たな情報が入り次第アップデートする」と説明した。スペインに本社を置く「KTGツアーズ」の関係者は「理由も、(観光中断が)どれほど続くかもわからない」と話した。

北朝鮮が受け入れを中断することを決めた理由は不明だが、共同通信は「欧米からの観光客が北朝鮮を見下すような発言をしていることが影響したという見方がある」と伝えた。
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