<W解説>独立運動記念日に韓国からの訪日旅行者多数も、「反日色」薄れたとは言い切れない?
<W解説>独立運動記念日に韓国からの訪日旅行者多数も、「反日色」薄れたとは言い切れない?
韓国は今月1日、日本の植民地支配に抵抗した1919年の「三・一独立運動」を記念する「三・一節」を迎えた。韓国の通信社・聯合ニュースによると、「三・一節」の3月1日からの3連休期間中に、23万人以上が航空便で日本と韓国を行き来したことがわかった。「三一節」と言えば、反日ムードが高まる日でもあり、この日を前後して韓国を旅行する日本人も外務省などから注意が呼び掛けられる。今や逆に韓国人が「三・一節」の休みを利用して日本を訪れる状況が生まれている。韓国からの訪日客数は新型コロナ禍を経て右肩上がりとなっており、韓国紙の中央日報は「三・一節の連休も例外なくこうした雰囲気が続いたものとみられる」と伝えた。

「三・一節」は、1949年に韓国の祝日である国慶日に制定された。1919年のこの日、民族を代表して独立運動家ら33人が世界に向け朝鮮民族の自主独立を宣言。これをきっかけに独立を求めるデモが韓国全土に広がった。これに、日本は武力でデモを弾圧し、独立運動で犠牲になった人は7500人を超えるとされている。「三・一節」は、日本の植民地支配に抵抗して市民たちが行ったこの独立運動をたたえる日となっている。

この日は街中の至るところに韓国の国旗「太極旗」が掲げられるほか、独立運動で犠牲になった人たちを追悼する記念行事などが行われる。

今年もソウル市内で記念式典が開かれた。「三・一節」の式典と言えば、かつては大統領の演説で、日本への批判が述べられてきたが、後に対日友好路線を敷くことになるユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が2022年に就任し、演説から批判的内容はなくなった。今年の演説でも日本への批判はなく、友好的なメッセージが送られたが、演説したのは尹氏ではなかった。

尹氏は昨年12月、国内に向けて「非常戒厳」を宣言した。非常戒厳は韓国憲法が定める戒厳令の一種。戦時や事変などの非常事態で、軍事上、必要となる場合や公共の秩序を維持するために大統領が発令するものだ。行政や司法の機能は軍が掌握し、言論・出版・結社の自由を制限することも認められる。戒厳令の発出は1987年の民主化以降、初めてのことだった。

非常戒厳は早期に解かれたものの、韓国社会に混乱をきたし、現在も不安定な政治状況が続いている。「共に民主党」など野党は、尹氏が「憲法秩序の中断を図り、永続的な権力の奪取を企てる内乱未遂を犯した」などとして憲法違反を指摘し、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出した。昨年12月、採決が行われ、賛成204票、反対85票で同案は可決した。これを受け、尹氏は職務停止となり、現在、チェ・サンモク経済副首相兼企画財政部長官が大統領の権限を代行している。

1日の「三・一節」の式典で尹氏に代わって演説したチェ氏は、日韓関係について「今のような厳しい国際情勢に効果的に対応するためには、韓日間の協力が必ず必要だ」と述べた。また、日韓が今年、国交正常化60周年を迎えるのを機に「過去の傷を癒やしつつ、韓日関係の新しい章を開いていくことに期待する」とした。尹氏のこれまでの演説と同様、日本への批判はなかった。

例年、「三・一節」には、街では「反日色」が強いデモが行われるが、今年は尹氏の弾劾の賛否を訴える大規模な集会が開かれた。聯合ニュースによると、ソウル市内の2か所で行われた尹氏の支持者による集会には、警察の非公式の推計で計12万人が集まったという。一方、野党5党が主催した、尹氏の罷免を求める集会には、警察の非公式推計で1万8000人が参加した。これとは別に、市民団体による集会も開かれ、警察の非公式推計で1万5000人が集まった。

韓国では「三・一節」の1日~3日まで3連休となったが、期間中に韓国の空港から日本路線を利用した乗客(出入国合計)は23万1956人で、前年同期比10.2%増加した。日韓関係が著しく冷え込んでいた2019年の「三・一節」の連休(20万1467人)と比べると15.1%多かった。

今や、韓国は「三・一節」であることを気にせず、この休みを利用して気軽に日本を旅行できる雰囲気になったのだろうか。必ずしもそうとは言えないようだ。韓国紙の朝鮮日報などが昨年2月、20~60代の男女1500人を対象に行った調査で、三・一節や光復節(独立記念日)に旅行で日本に行くことをどう思うか尋ねたところ、63%が「望ましくない」と回答した。「日本による植民地支配に抵抗して起きた『三・一独立運動』を記念する日に日本旅行とは何事か」という主張だ。一方、「構わない」との回答は37%だった。

聯合ニュースは「日本路線の人気は、韓国人に対するビザ免除措置を再開した2022年末から高まっている」と指摘。「『三・一節』にも、こうした傾向が続いたとみられる」と分析した。また、「物価高や円安も追い風となった」と補足した。中央日報によると、旅行業界の関係者は同紙の取材に「円安のおかげで旅行費用を抑えることができるという認識があり、日本旅行の人気は続くものとみられる」と話した。
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