<W解説>韓国・尹大統領の弾劾審判の結論持ち越し=当初、今月14日が有力視されていた理由
<W解説>韓国・尹大統領の弾劾審判の結論持ち越し=当初、今月14日が有力視されていた理由
韓国の憲法裁判所による、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の弾劾審判の宣告は今月14日にも下されるとの見方が有力だったが、持ち越しとなった。韓国の主要メディアは、今週にも宣告される可能性が高いとの見方を伝えている。そもそも、14日の宣告が有力視されていたのはなぜなのか。

尹氏は昨年12月、国内に向けて「非常戒厳」を宣言した。非常戒厳は韓国憲法が定める戒厳令の一種。戦時や事変などの非常事態で、軍事上、必要となる場合や公共の秩序を維持するために大統領が発令するものだ。行政や司法の機能は軍が掌握し、言論・出版・結社の自由を制限することも認められる。戒厳令の発出は1987年の民主化以降、初めてのことだった。

非常戒厳は早期に解かれたものの、韓国社会に混乱をきたし、現在も不安定な政治状況が続いている。「共に民主党」など野党は、尹氏が「憲法秩序の中断を図り、永続的な権力の奪取を企てる内乱未遂を犯した」などとして憲法違反を指摘し、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出した。昨年12月、採決が行われ、賛成204票、反対85票で同案は可決した。これを受け、尹氏は職務停止となり、現在、チェ・サンモク経済副首相兼企画財政部長官が大統領の権限を代行している。

同案の可決を受け、憲法裁が6か月以内に尹氏を罷免するか、復職させるかを決めることになった。罷免となった場合は、60日以内に大統領選挙が行われる。

憲法裁では1月から弁論が行われてきた。弾劾審判では、戒厳令の正当性が争点となり、国会訴追団側は、「非常戒厳」の宣言が、憲法77条が規定する「戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態」との要件を満たさず出されたことや、戒厳時に国会へ軍を動員し政治家らを逮捕しようとしたことなどが憲法違反だと主張した。一方、尹氏は審判に自ら出席し、「非常戒厳」の宣言は統治行為だったとして正当性を訴えた。

憲法裁では先月25日、尹氏も出廷して最終弁論が開かれた。韓国ではこれまで、ノ・ムヒョン(盧武鉉)、パク・クネ(朴槿恵)両元大統領が弾劾訴追されたが、大統領本人が出廷し、最終意見陳述を行うのは初めてのことだった。尹氏は「非常戒厳」を出した目的について「亡国的な危機的状況を知らせ、憲法制定権力である主権者が出てくるよう訴えることだった」とし、その上で「目的を相当部分達成したと考えている」と述べた。

尹氏は職場復帰にも意欲を見せ、復帰すれば「任期後半は未来世代のために政治改革の推進に集中する」と強調。これまで日米との協力を主導してきたことから、対外政策に注力し、国内問題に関しては首相に権限の多くを譲る考えを示した。

国民に対しては、「国家と国民のための戒厳だったが、その過程で国民の皆さんに混乱と不便を与えたことを申し訳なく思う」などと謝罪した。

一方、弾劾訴追した国会側を代表して出廷し、最終意見陳述を行った野党議員は「尹大統領は憲法を破壊し、国会を蹂躙(じゅうりん)しようとした。民主主義と国家の発展のために罷免しなければならない」と主張した。

尹氏の弾劾審判が結審し、尹氏の罷免の是非は憲法裁の判断に委ねられることとなった。憲法裁による宣告日について、韓国メディアの多くは今月14日に行われる可能性が高いと報じてきた。憲法裁からは、予め宣告日の通知があるが、同日までに、その通知すらなく、宣告は今週以降に持ち越されることになった。

14日の宣告が有力視されていたのは、過去に弾劾訴追された盧武鉉、朴槿恵両元大統領が、いずれも弾劾審判の最終弁論から約2週間後の金曜日が宣告日だったためだ。尹氏の弾劾審判は先月25日に結審。14日は結審から約2週間後の金曜日だった。宣告は今週以降に持ち越されたため、歴代大統領の弾劾審判で宣告までの期間が最長となった。

通信社・聯合ニュースは今週半ばから後半ごろに宣告が行われる可能性が高いと予想。通常、宣告の2~3日前に宣告日が通知されることから、憲法裁が今週初めに宣告日を通知し、「19~21日ごろに罷免の是非を言い渡すとの見方が出ている」と伝えた。
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