サムスンは先月末から、サムスン電子をはじめとするグループの副社長以下の役員約2000人を対象に「サムスンらしさを取り戻す価値教育」を行っている。
セミナーでは、サムスン創業者の李秉チョル(イ・ビョンチョル)氏と李健熙(イ・ゴンヒ)前会長の経営哲学を盛り込んだ映像が上映された。
李在鎔氏は映像には登場しなかったが、メッセージを通じ「サムスンは生きるか死ぬかという生存の問題に直面した」とした上で「経営陣から痛烈に反省しなければならない」と述べた。また、重要なのは危機という状況ではなく危機に対処する姿勢だとして、目先の利益を犠牲にしても未来のために投資すべきだと指摘。技術の重要性も重ねて強調した。
続いて、大学教授などの専門家が外から見たサムスンの危機などをテーマに講演した後、出席者らが危機対処やリーダーシップ強化策などについて討論した。
出席者の1人は「これまでサムスンが慢心しすぎていたという問題意識とともに心構えを新たにし、より強くならなければならないという趣旨が伝わった」とし、「それだけ現在のサムスンが切羽詰まっているという危機意識も感じることができた」と説明した。
実際にグループ中核企業、サムスン電子は半導体事業の昨年の業績が、汎用メモリーの不振や広帯域メモリー(HBM)の納品遅延などにより市場の期待に及ばなかった。
今後の見通しも明るいとはいえない。金融経済情報メディアの聯合インフォマックスがこの2カ月以内に報告書を公表した証券会社21社の業績予想を集計した結果、サムスン電子の1~3月期の営業利益は5兆1168億ウォン(約5260億円)で、前年同期比22.5%減少すると予測された。最近は5兆ウォンを割り込むとの見方も出ている。
2024年の事業報告書によると、サムスン電子のテレビ市場でのシェアは23年の30.1%から昨年は28.3%に下落。スマートフォン(19.7%から18.3%)、DRAM(42.2%から41.5%)など、主要製品のシェアが全般的に下向きとなった。
一方、昨年の研究開発費は35兆ウォン、設備投資費は53兆6000億ウォンで、いずれも過去最高を記録した。
グループ全体の複合的危機を打開するため、昨年末にシンクタンクのサムスングローバルリサーチ傘下に新設された経営診断室は1月、半導体設計を担当するシステムLSI(大規模集積回路)事業部に対する経営診断に着手した。さらに、DX(デバイスエクスペリエンス、モバイル・家電)部門の「新事業タスクフォース(TF)」は「新事業チーム」に格上げされ、未来事業の発掘と大型M&A(合併・買収)に対する期待が高まっている。
サムスンは09年から16年まで毎年役員向けのセミナーを行っていたが、今回は9年ぶりの開催となった。
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