<W解説>米国が韓国を指定した「センシティブ国」とは?米韓関係に影響は?
<W解説>米国が韓国を指定した「センシティブ国」とは?米韓関係に影響は?
米国の核兵器を管理する米エネルギー省が、韓国を「センシティブ国」に指定したと、ロイター通信が今月15日に報じた。センシティブ国とは、米国政府が核不拡散や安全保障上などで特別な注意を払っている国を指す。現在、中国、ロシア、イラン、北朝鮮、イスラエルが指定されている。

米エネルギー省が韓国をセンシティブ国に指定した理由は明らかになっていないが、北朝鮮が核・ミサイルを加速させる中、韓国内で核武装論が高まっていることを懸念した可能性がある。核武装論に歯止めをかけるため、米国政府が警告を送っているのではないかとの見方が出ている。

2021~2023年にかけて韓国統一研究院が行った世論調査で、「韓国は核武装すべきか」との質問に、回答した韓国国民の60~70%が「すべき」と答えた。他の機関の調査でも、50~70%が核保有を支持する結果となった。

韓国において、核開発の推進、核武装を求める声が高まっている理由について、米スタンフォード大学のスコット・セーガン教授は、安全保障の確保、国家の威信、原子力コミュニティの影響力の3つを挙げた。韓国は、ミサイル発射実験を繰り返し、核を保有する北朝鮮の脅威にさらされており、こうした背景から、安全保障に不安が高まっていることは明らかだ。

韓国は1970年代に秘密裏に核兵器の開発を進めたことがある。しかし、米国がこれに気づき、韓国政府に対し、核開発を続けるか、米国の既存の核兵器を用いて韓国を防衛するかの二者択一を迫られた。韓国政府は米国の支援を受けることを選択し、今日まで米兵が朝鮮半島に駐留している。

英国の公共放送BBCは2023年4月、ニュースウェブサイト上に「韓国はなぜ核兵器を欲しているのか」との見出しのソウル特派員による解説記事を掲載した。特派員は記事で「北朝鮮は、米国全土の都市を狙える、これまで以上に洗練された核兵器を製造している。そんな状況下でも米国は韓国を守ってくれるのか、(韓国)国民は疑問を持っている」と指摘した。その上で、特派員は、執筆当時、韓国で発足して間もなかった「核戦略フォーラム」の会合のランチタイムで、韓国が核開発をする方法を策定することが議題に挙がったことを紹介し、「彼ら(政治家や科学者、軍関係者らランチタイムの参加者)が思い巡らせているシナリオはこうだ。好戦的な北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記が韓国を攻撃し、米国が介入せざるを得ない状況をつくる。そして金氏が、米国が撤退しなければ、米本土で核爆弾を爆発させると脅す。もしそうなった場合、米政府はどうするのか。サンフランシスコががれきと化すリスクを冒してまで、ソウルを救うのだろうか。おそらくそんなことはしないというのがランチタイムの秘密会議に出席した人たちの結論だ」とした。

2016年、トランプ米大統領は韓国が米国の防衛態勢にタダ乗りしていると非難。在韓米軍の経費を韓国政府に負担させるか、それができなければ軍を撤退させると主張した。そのトランプ氏が今年1月、大統領に再就任した。韓国では、かつてトランプ氏が発した言葉を思い出した国民も多いだろう。

第2次トランプ米政権の発足で、韓国国内では米国が北朝鮮の脅威から守ってくれるのかとの疑念が一層高まる中、ロイター通信は15日、米エネルギー省が韓国を「センシティブ国」に指定していたことが分かったと報じた。バイデン前政権が、トランプ政権発足の直前に韓国をセンシティブ国のリストに追加したという。ロイターによると、指定は4月15日に発効する。指定後も、韓国との科学技術協力に制限はないが、韓国の通信社・聯合ニュースは「センシティブ国に指定された国出身の研究者は、エネルギー省の関連施設、研究機関での勤務や、研究参加が制限される恐れがある」と報じている。また、韓国紙の中央日報は「韓米が昨年から推進するAI共同研究プラットフォームや、次世代の事業として評価される量子コンピュータの開発にも支障が避けられない」と懸念した。
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