タイ人訪韓者が急減した理由としては2つのことが指摘されている。1つは、2021年9月に韓国法務部(法務省に相当)が「電子渡航許可制度(K-ETA)」を導入したことだ。同制度は、入国前にオンラインで必要事項を入力し、入国許可を受けるもので、入国ビザが免除されている国籍の渡航者に対し、K-ETAの取得を義務付けている。日本など22か国、地域はK-ETAの適用を免除されているが、タイなどから訪韓する際には事前の登録が義務付けられている。だが、制度導入後、出入国審査でタイ人が明確な基準なしに入国拒否されるケースが相次ぐようになった。韓国ではタイ人の不法滞在が問題となっており、そのために入国が厳格化されたものとみられているが、タイでは不満が高まり、反韓感情につながった。また、登録の際にかかる手数料が過剰とも指摘されている。昨年は、タイの観光スポーツ相の妻やインフルエンサーが入国拒否され、これが報じられるや、約1万人が韓国旅行をキャンセル。SNSでは、ハッシュタグ「韓国には行かない」、「Ban Korea(バンコリア・韓国禁止)」が拡散した。
韓国では、人口減少により、製造業の労働力不足と地方の高齢化が深刻化しており、労働力を補うために移民の受け入れを進めてきた。2024年の在留外国人は265万人で、東アジアで初めて外国人人口が総人口の5%を超えた。しかし、労働ビザが切れた不法滞在者が大量に発生し、韓国政府は不法滞在の摘発を強化した。その一環で、前述のように、韓国はタイ人などを対象に、訪韓する際、K-ETAの取得を義務付けている。「K-ETA施行以降の年間団体訪韓観光キャンセル状況」によると、一昨年はタイで少なくとも91の団体、計9947人が計画していた韓国旅行を断念した。タイ国旅行代理店協会(TTAA)の会長は昨年6月、「韓国旅行拒否運動が起こる前、韓国はタイで人気旅行先トップ3の一つだったが、そうした時期はもう終わった」と語った。
摘発の強化で、韓国における不法滞在者は2023年の42万人をピークに、昨年は39万人に減った。一方、韓国旅行に高い関心を寄せてきたタイからの旅行者の減少を招くことにつながった。文化体育観光部(部は省に相当)は昨年、タイ人観光客の誘致を目指し、法務部に対し、期間限定でK-ETAの一部免除を要請したが、受け入れられなかった。法務部は不法滞在を防ぐために必要な措置であり、タイ人に対する差別ではないとしている。
訪韓タイ人観光客の減少の2つ目の理由として、韓国の物価が高いことが指摘されている。物価データベース「Numbeo」によると、ソウルと東京を比較した場合、昨年のソウルの物価(家賃を除く)は東京よりも25.1%高く、レストランの平均価格もソウルは1万500ウォン(約1077円)で、東京(約905円)より19.1%高かった。今やタイ人観光客は、日本や台湾などに流れているとされる。
危機感を抱いた韓国観光公社は今月、タイ旅行業協会の関係者や、同国の旅行会社の代表らを招き、さまざまな観光コンテンツを体験してもらった。韓国メディアによると、プログラムは好評だったという。韓国経済によると、韓国観光公社のソ・ヨンチュン社長代行は「公社は今回、両国の友好的な雰囲気を確認した。Kカルチャーを活用した様々な旅行商品の開発を共に進めていくなど、タイの旅行業界との交流を拡大し続けていく」と話した。
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