憲法裁判所
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韓国の憲法裁判所は今月24日、国会で野党側が発議したハン・ドクス首相の弾劾訴追を棄却した。ハン氏は同じく国会で弾劾訴追案が可決したユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の職務代行を務めていたが、その後、自身の同案が可決して職務停止となっていた。ハン氏は首相として職務復帰し、再び大統領の権限を代行する。ハン氏の弾劾審判が終わったことで、憲法裁は早ければ今週中にも尹氏に対する宣告を行うとみられる。韓国メディアの中には「今回の決定により、今後、結論が出るユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の弾劾審判にも影響が生じるものとみられる」(ヘラルド経済)などと報じているところもある。また、26日には、ソウル高裁が最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表の選挙法違反事件の控訴審に対する判断を下す。韓国紙の朝鮮日報は今週を「韓国司法スーパーウイーク」と表現。「大統領、首相、野党第一党代表の政治的運命が懸かった週を迎え、政界では激しい動きが予想されている」と伝えた。

韓国では、尹氏が昨年12月、「非常戒厳」を宣言した。非常戒厳は韓国憲法が定める戒厳令の一種。戦時や事変などの非常事態で、軍事上、必要となる場合や公共の秩序を維持するために大統領が発令するもの。行政や司法の機能は軍が掌握し、言論・出版・結社の自由を制限することも認められる。戒厳令の発出は1987年の民主化以降初めてのことだった。

発出を受け、武装した戒厳軍の兵士がガラスを割って国会議事堂に突入した。軍事政権時代を連想させる事態に、国会前には多くの市民が集まり、戒厳に反対するシュプレヒコールを上げたほか、軍の車両を取り囲むなど騒然とした。

だが、戒厳令は国会議員の過半数が解除を求めた場合、大統領はこれに応じなければならず、発令直後、国会で本会議が開かれ、出席した190人の議員全員が解除に賛成。尹氏はわずか6時間で非常戒厳を解いた。

「共に民主党」など野党は、尹氏が「憲法秩序の中断を図り、永続的な権力の奪取を企てる内乱未遂を犯した」などとして憲法違反を指摘し、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出した。同案は可決し、尹氏の大統領としての権限は停止。ハン氏が大統領職を代行することとなった。

ハン氏は当時、「国政を安定的に運営することに、全ての力と努力を尽くす」と表明し、大統領代行として混乱の収拾に奔走したが、野党はハン氏が戒厳を黙認し、憲法裁の欠員判事の任命を拒んだとしてハン氏の弾劾訴追を主導。国会で弾劾を求める議案が可決し、ハン氏は職務停止となった。大統領と首相が相次いで職務停止となる異例の事態となり、その後は、チェ・サンモク経済副首相兼企画財政部(部は省に相当)長官が大統領権限代行を務めてきた。

憲法裁で2月、ハン氏の弾劾審判の弁論が開かれ、ハン氏は戒厳に反対したと主張。即日結審した。

憲法裁は今月24日、ハン氏に対する弾劾訴追を棄却した。憲法裁の8人の裁判官のうち5人が棄却、1人が認容、2人が却下との意見だった。弾劾審判では6人の賛成がないと罷免できない。憲法裁は宣告の中で、尹氏の「非常戒厳」の宣言をめぐり、ハン氏が憲法に違反する行為をしたとは認められないと指摘。罷免を正当化する理由はないとした。

ハン氏は24日、記者団に対し、「憲法裁の賢明な決定に感謝する」と述べた。国民に向けて談話も発表し、「憲法と法律に基づき、安定的な国政運営に全力を尽くす」などと述べた。また、「超党派的な協力が当然である主な国政懸案を安定感とスピード感を持って進めるよう、私から渾身(こんしん)の努力を尽くす」とした上で、与野党に向け「韓国が今の危機局面を乗り越え、再び飛躍できるよう、与野党の超党派的な協力をお願いしたい」と呼び掛けた。

ハン氏の棄却を受け、与党「国民の力」は24日、記者会見し、「巨大野党の無理な立法暴挙に対する司法部(部は省に相当)の厳しい警告」として、憲法裁の判断を評価した。一方、野党側は「司法の独立性と正義に疑問を抱かせる判断」と批判した。「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表は「憲法裁の決定は尊重せざるを得ない」とした一方、「果たして国民が納得するかはわからない」と述べた。

ハン氏は職務に復帰したが、憲法裁では近く、尹氏に対する宣告を行うものとみられ、今週中との見方も出ている。また、26日には、ソウル高裁において「共に民主党」の李代表の公職選挙法違反事件の控訴審判決が予定されている。韓国紙のハンギョレは「今後の政局の行方を分ける運命の一週間になるとみられる」と伝えた。
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