日本で高い人気を誇った韓国人歌手、桂銀淑(資料写真)=(聯合ニュース)
日本で高い人気を誇った韓国人歌手、桂銀淑(資料写真)=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】韓国外交部が扱う1994年の公文書の機密指定が解除され28日までに公開された。機密が解除された文書には、日本で高い人気を誇った韓国人歌手、桂銀淑(ケ・ウンスク)が同年にソウルで行ったディナーショーを巡り、日本語での歌唱を許すかどうかについて政府内で議論した内容を記したものが含まれていた。

 現在は韓国の歌手が日本語の曲を発売し、日本で人気を得れば「国威を発揚した」などと評価され、韓国の音楽番組で日本語の曲が流れても騒ぎになることはないが、わずか30年前までは公の場で日本の曲を歌うには政府の許可が必要だった。

 ことの発端は日本の大手旅行会社が94年2月に、ソウルのロッテホテルで桂銀淑のディナーショーを企画したことだった

 日本人観光客800人の参加を見込んだ企画だっただけに、主催側は桂銀淑が日本の曲を歌えるよう政府に許可を申請した。 

 当時の韓国政府は、歴史問題などが解決されていないことなどを理由に、日本の大衆文化の流入を防いでいた。韓国の歌手が日本の曲を公演で歌うことを認めず、日本の曲を韓国語に翻訳して歌うことも許さなかった。 

 在日韓国大使館は「国民感情を考慮しながら慎重に対処しなければならない事案」としながらも、94年「韓国訪問の年」の成功と海外旅行の自由化以降、赤字に転じた旅行収支改善のために日本人観光客の誘致が必要とし「前向きに検討しなければならない」という意見を本国に伝えた。 

 外交部内では意見が分かれた。対日関係を担った亜州局は「国民の対日感情に直結する事項」とし、扱い方を間違えれば反日感情を煽る悪材料として作用する恐れがあるとし、慎重論を展開した。 

 金泳三(キム・ヨンサム)政権発足後初めて開かれた1993年の韓日首脳会談を機に、新たに構築されつつある両国関係の良い雰囲気を壊す可能性があるとの立場だ。 

 一方、文化協力局は「日本人限定」のイベントという点で前向きな意見を出した。ディナーショーが国民感情に与える直接的な衝撃を最小化しつつ、日本の大衆文化を受け入れることができるかを試す機会として活用するとの立場を示した。 

 金泳三大統領の訪日を控え、「交渉カード」として活用できるとの意見もあった。 

 最終的に当局は、ディナーショーでの日本語曲の歌唱を認めない代わりに日本の大衆文化に関連した行事を行う案と、韓国の曲も歌うことを前提に日本語曲の曲数を制限することでディナーショーを認める案を天秤にかけ、後者を選んだ。

 政府が過度に介入する印象を与えれば、文民政府時代の自由追求の流れに逆行するように映る恐れがあるとする意見が考慮された。


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