<W解説>韓国最大野党代表、逆転無罪判決=「司法リスク」からの解放で、次期大統領選へ弾みつくか
<W解説>韓国最大野党代表、逆転無罪判決=「司法リスク」からの解放で、次期大統領選へ弾みつくか
公職選挙法違反の罪に問われた、韓国の最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表の控訴審で、ソウル高等裁判所は今月26日、1審の有罪判決を取り消し、無罪を言い渡した。李氏は次の大統領選挙の有力候補とされている。通信社の聯合ニュースは、「1審判決が確定すれば、今後10年間被選挙権を失い立候補できなくなったが、逆転無罪となり、大統領選に向け弾みがついた」と伝えた。

李氏をめぐっては、ソウル郊外のソンナム(城南)市長だった当時に進めた都市開発に関連し、前回大統領選の候補者だった2021年に虚偽の発言をしたとして、昨年11月の1審で懲役1年、執行猶予2年の有罪判決を受けた。この判決に、李氏側と検察の双方が控訴した。そして、ソウル高裁は今月26日、李氏の公職選挙法上の虚偽事実公表の疑いについて、無罪を言い渡した。都市開発事業で、土地を用途変更した理由について、李氏が国会の国政監査で「国土交通部(部は省に相当)から圧力があったため」と述べたことについて、ソウル高裁は「誇張したと見ることはできるが、虚偽と見るのは難しい」などと判断した。

李氏は判決後、記者団に対し「真実と正義に基づいて正しい判決を下してくれた裁判所にまず感謝する」と話した。その上で、韓国国内で大規模な山火事が発生したことなどと絡めながら「検察が、また政権が、李在明を捕まえるために証拠を捏造(ねつぞう)し、事件をでっち上げることに使ったその能力を、山火事の予防や国民生活の改善に使っていたらどれほど良い世の中になっていたことか」と検察や政権を批判した。さらに検察に対して、「自らの行為を振り返り、こうした無駄な努力はやめるべきだ。事は道理に帰する」と訴えた。

判決を受け、李氏が代表を務める「共に民主党」は歓迎の意を示した。また。同党のチョン・ヒョンヒ最高委員は記者団に「政治検察に事実上の死刑宣告を下した判決。検察は国民に謝罪しなければならない」と検察を強く批判した。一方、与党「国民の力」の臨時執行部トップのクォン・ヨンセ非常対策委員長は「非常に遺憾」とした上で、大法院(最高裁)での迅速な審理を求めた。

検察は「公職選挙法の虚偽事実公表罪に関する法理を誤解しており違法」とし、「被告の主張だけを漠然と信頼した」と高裁の判断を批判。上告する方針を示した。

韓国では、昨年12月に「非常戒厳」を宣言したユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が弾劾訴追され、憲法裁判所が近く、尹氏を罷免するか否かの判断を下す。仮に尹氏が罷免された場合、60日以内に大統領選が行われる。次期大統領選で、李氏は有力候補と目されており、それだけに、李氏の裁判の行方が注目されていた。公職選挙法違反で有罪が確定すれば、5年間、大統領選を含む公職選挙への出馬ができなくなるからだ。だが、今回の無罪判決により、李氏は当面、「司法リスク」から解放された。

一方、検察が上告する方針を示しているため、仮に尹氏が罷免され早期の大統領選が行われる場合、李氏が出馬すれば大法院の裁判と同時に選挙運動が行われることになる。これについて、聯合ニュースは「公職選挙法の規定によると、控訴審判決から3か月以内となる6月26日までに大法院の判断が示される必要がある。ただ、処罰規定はないため、この期限が守られないケースが多い」と解説。刑事訴訟法に従って上告審の手続きを進めた場合、通常の上告手続きだけで1か月以上かかるため、「3か月以内に結論を出すのは不可能との見方もある」と伝えた。このため、法曹関係者の間では、早期に大統領選が行われた場合、投開票日までに上告審の判断が出る可能性は低いとの見方も出ているという。

控訴審で逆転無罪となり、大統領選に向け弾みがついた李氏だが、他にも四つの刑事裁判を抱えていることから、世論の反発は根強い。
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