尹前大統領は任期中に妻の金建希(キム・ゴンヒ)氏を巡るさまざまな疑惑や少数与党体制の厳しい構図から抜け出せず、「非常戒厳」を宣言して自滅した。
尹政権は発足後、大統領執務室を「青瓦台」から国防部庁舎に移転するなど、文在寅(ムン・ジェイン)前政権との差別化に注力した。自由市場経済を最優先価値とし、政府の赤字を減らすため健全財政を掲げ、所得主導型成長を推進した文前政権とは徹底的に異なる道へ進もうとした。
また、労働・年金・教育・医療改革に少子化対策を加えた「4プラス1改革」を掲げた。このうち、国民に最も直接的な影響を与えたのは医療改革だった。地方の医師不足などの対策として大学医学部の定員増を打ち出したが、医師らが強く反発して病院を離れ、国民の健康が脅かされる状況が続いている。集団休学をした医大生の大多数が先月末に復学したが、医学部定員増を巡る問題はまだ解決していない。
尹政権は昨年9月、21年ぶりとなる国民年金の改革案を発表し、年金改革を本格化させた。改革案は若い世代の保険料を減額し、近く年金を受け取る世代の保険料は増額する一方、積立金が枯渇する時期になると保険料と給付額を調整することが柱となっている。与野党は意見の隔たりを埋められなかったが、先月、保険料率を現行の9%から13%に引き上げ、現役世代の手取り平均収入に対する年金の給付水準を示す「所得代替率」を43%に引き上げることで合意し、今月1日に改正国民年金法が公布された。
教育改革分野では小学校で放課後に実施する学童保育「ヌルボム学校」を施行した。
昨年の出生数が9年ぶりに増加に転じるなど、少子化への対応では前向きな兆しが見えたとされる。
だが、尹前大統領の罷免により、改革の成果まで傷つけた。
尹政権は対外政策でも文前政権とは全く異なる路線を歩んだ。文前政権は「戦略的曖昧さ」を維持することに重点を置いたのに対し、尹政権は「戦略的明確性」への転換を図った。
民主主義の価値に基づいた外交を掲げ、米国や日本と結束した。米国とは核問題を扱う2国間協議である「核協議グループ(NCG)」を発足させ、日本とは両国の首脳同士が相互に往来する「シャトル外交」を再開させた。韓米日3カ国の連携は米大統領山荘キャンプデービッドで開催された3カ国首脳会談を機に「準同盟」との評価も出た。
だが、中国やロシアとの関係は急速に悪化した。尹前大統領は在任中に一度も中国を訪問せず、習近平国家主席も韓国を訪問しなかった。ウクライナを侵攻したロシアに対する欧米の制裁に参加し、対ロ関係は最悪の事態に陥った一方、北朝鮮はロシアを支援するため兵士を派遣し、北朝鮮とロシアは軍事同盟レベルに接近した。
トランプ氏が再び米大統領に就任し、バイデン前政権で構築した韓米・韓米日の連携も不透明な状況だ。各国の首脳が自国の利益のため、トランプ氏と対話や交渉を行う中、韓国は尹前大統領の弾劾により正常な首脳外交ができなかったことは痛手となった。
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