憲法裁はその根拠としてまず、尹氏が国会との対立状況を打開する目的で軍や警察を国会に派遣して国会の憲法上の権限行使を妨害した点を挙げた。
また、兵力で中央選挙管理委員会を家宅捜索し、憲法が定める統治機構を無視し、布告令を発令して国民の基本権を広範囲に侵害したとも指摘した。
憲法裁はこのような行為自体が法治国家、民主国家の原理の基本原則に反するものだったとし、「それ自体で憲法秩序を侵害し民主共和政の安定性に深刻な危害を及ぼした」と判断した。
また、最も慎重に行使されるべき国家緊急権を憲法で定めた範囲を超えて行使することで、大統領の権限行使に対する不信を招いたとみなした。
ただ、憲法裁は野党主導により異例の多さで弾劾訴追案が国会に提出され、2025年度(1~12月)予算案については、政府原案から野党が削減のみ行い野党単独で可決するなど、尹氏が国政運営において困難に直面していたことを認めた。
憲法裁は「被請求人(尹氏)が策定した主要政策は野党の反対で実施できず、その過程で野党の専横により国益が顕著に阻害されていると認識し、これをどうにか打開しなければならないという重大な責任を感じることになったとみられる」と指摘した。
また、尹氏のこのような認識が政治的に尊重されなければならないことも事実だと認めた。
ただ憲法裁は尹氏と国会の対立が、どちらか一方の責任とはみなし難く、民主主義の原理によって対話と妥協を通じて解消されるべき政治的問題だったとし、戒厳宣言を正当化することはできないと判断した。
また尹氏が「国家緊急権の乱用の歴史を再現し国民に衝撃を与え、社会、経済、政治、外交の全分野に混乱を引き起こした」と強調した。
憲法裁は、尹氏が就任後、国会議員総選挙が行われるまでの2年間、自身が国政を主導するよう国民を説得する機会が十分にあり、たとえ望まない選挙結果が出たとしても、野党を支持した国民の意思を排除してはならなかったと指摘した。
また国会を協議ではなく排除の対象にする行為自体が、民主政治の前提を崩すことだとも規定した。
憲法裁は尹氏が社会共同体を統合しなければならない責務に違反し、軍と警察を動員して憲法機関の権限を毀損(きそん)することで、国民の信任を重大に裏切ったと判断した。
そのうえで、尹氏を罷免することで得られる憲法守護の利益は大統領の罷免による国家損失を圧倒するほど大きいと結論付けた。
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