コンテナが積まれた釜山港=(聯合ニュース)
コンテナが積まれた釜山港=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】トランプ米政権が導入した相互関税は全世界が対象となり、自由貿易協定(FTA)を結んだ同盟国の韓国も例外ではなかった。韓国には25%の相互関税が課される。韓国政府は通商交渉本部長の訪米を進めるなど正式な交渉チャンネルの稼働に乗り出す計画だが、交渉で結果を得ることを急ぐのではなく、戦略策定に慎重を期す立場のようだ。米国が韓国企業の生産基地のベトナムなどグローバルサウス(主に南半球に位置するアジアやアフリカなどの新興国・途上国)にも高関税を適用した状況の中で、韓国企業の大々的な供給網(サプライチェーン)再編の可能性がある上、日本、欧州連合(EU)など競争国の対米交渉も注視しなければならないためだ。

 政府高官は6日、聯合ニュースの取材に対し「主要産業の海外生産基地となっているグローバルサウスなど第三国に対しても米国が高関税を課した状況であるため、韓国企業の交易構造と供給網の再編が行われるとみられる。この過程を見守ってから本格的な通商交渉に取り掛かるために政府と業界は息を整えている」と述べた。

 また「競争国の状況も見守らなければならないため、韓国が先に持ち札を出しながら交渉に乗り出すことは産業界にとって決して有利ではない。今は落ち着いた対応が必要な時だ」と強調した。

 政府と通商当局が交渉に慎重な態度を示す背景には第2次トランプ政権が各国に課した相互関税の税率が非関税障壁や貿易構造を精密に分析した結果というよりは、ただ単に対米貿易黒字の規模に比例して適用されたという認識がある。

 税率を下げるには対米黒字を減らすことが鍵となるが、輸出が経済成長の中核を成す韓国としては世界最大市場の米国への輸出を抑制ばかりしてもいられない。

 政府と業界はまず対米交易構造と供給網の再編を中心に対応策を講じるとみられる。

 韓国企業の主な海外生産基地のベトナム、インドなどグローバルサウス地域は相互関税の最大の被害を受けた地域に挙げられる。

 韓国企業の中でもサムスン電子は世界で生産する同社のスマートフォンの5割以上をベトナムで調達している。しかし、ベトナム製輸入品に対する相互関税の税率は46%で、米市場への参入の制約は避けられなくなった。

 業界関係者は「ベトナムなどで生産した製品の米国輸出が困難になり、輸出先を欧州や中国などに多角化すると同時に相互関税の税率が相対的に低い韓国で生産した製品を米国に輸出する戦略が検討可能だ」と話している。

 政府は企業の供給網再編の可能性を念頭に置き、米国との交渉の戦略を練る必要がある。

 また、トランプ氏が米国以外の地域で生産された自動車や基幹自動車部品に課すことを発表した25%の関税が3日に正式に発動したため、政府は自動車産業に対する緊急支援対策を今週中に発表する予定だ。

 対策には自動車業界を対象に国内消費を押し上げ、根本的な技術競争力を強化する一方、供給網再編に必要な費用を支援する内容が含まれる見通しだ。

 政府は競争国の動きも注視している。韓国が初期交渉を通じて相互関税の税率引き下げに成功したとしても、その後に交渉に乗り出した競争国が韓国より有利な条件を得れば結果的に韓国が不利になるという判断からだ。世界のほとんどの国・地域が相互関税の対象に含まれているため周辺国の交渉戦略と成果が韓国の対応の方向性にも直接的な影響を与えるしかない。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の罷免で交渉の実質的なコントロールタワーが不在であることも政府が対米交渉を加速できずにいる要因となっている。

 首脳同士の意思疎通を重視するトランプ氏のスタイルを考慮すると、アラスカ産液化天然ガス(LNG)購入などといったカードは新政権発足後に使う可能性が高いという。

 政府高官は「アラスカ産LNGプロジェクトの場合、経済性やLNG供給の時期などについてさらに具体的に把握していく。韓国がプロジェクトに参加しないという意味ではないものの、簡単に承諾することもできない問題なので、今後の首脳レベルの取引で使われるカードになる可能性が高い」と述べた。


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