韓国では今月4日、憲法裁判所が、大統領の職にあった尹氏の罷免を決定した。尹氏は昨年12月、国内に向けて「非常戒厳」を宣言した。非常戒厳は韓国憲法が定める戒厳令の一種。戦時や事変などの非常事態で、軍事上、必要となる場合や公共の秩序を維持するために大統領が発令するものだ。
非常戒厳は早期に解かれたものの、韓国社会に混乱をきたし、国内政治は不安定となった。「共に民主党」など野党は、尹氏が「憲法秩序の中断を図り、永続的な権力の奪取を企てる内乱未遂を犯した」などとして憲法違反を指摘し、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出した。昨年12月、採決が行われ、賛成204票、反対85票で同案は可決した。これを受け、尹氏は職務停止となった。
同案の可決を受け、憲法裁が6か月以内に尹氏を罷免するか、復職させるかを決めることになり、憲法裁では1月から2月25日まで計11回弁論を開いて審理を行ってきた。
憲法裁は今月4日午前、判事8人全員一致により、尹氏の罷免を認める決定を言い渡した。尹氏が失職したため、今後、公職選挙法に基づき、60日以内に大統領選挙が行われることになった。
現在、大統領の権限を代行しているハン・ドクス首相は8日午前、政府ソウル庁舎で定例の国務会議を開き、大統領選を6月3日に行う案件を議決した。政府は、国民の円滑な投票権行使のため、投票日当日を臨時の公休日に指定した。
選挙関連の各日程も決まった。各政党が選出した大統領候補は5月10~11日に中央選挙管理委員会に立候補を届け出なければならない。また、立候補予定の公職者は、投票日の30日前の5月4日までに辞職しなければならない。選挙運動は5月12日から6月2日まで22日間にわたり行われる。
投票日が6月3日に正式決定したことを受けて、与野党からは出馬表明が相次いでいる。「共に民主党」の李氏は9日、出馬に向け党代表職を辞任した。李氏は同日の党会議で「これから新しい仕事を始めることになるだろう」と述べた。李氏は早ければ本日10日にも出馬宣言をする見通しだ。李氏は2022年の大統領選では、尹氏に僅差で敗れたが、次期大統領にふさわしいと思う人物を聞いた最近の各世論調査では他者を大きくリードしている。一方、今回の大統領選は、中道層の票をいかに取り込むかが焦点になるとみられているが、李氏は現在、複数の刑事裁判を抱えている上、過激な言動も目立ち、中道層の中には拒否感を抱く有権者も少なくない。
「国民の力」も候補者選定に動いている。雇用労働相の職にあったキム・ムンス氏は8日、出馬のため辞任した。キム氏は離任式で「今、韓国は困難に陥っている」とした上で、「今こそ偉大な韓国を再び立て直さなければならない時だ」と強調した。9日には、正式に出馬宣言し「私に下された国民の思いを受け止めることにした」と述べた。キム氏は尹氏の弾劾に反対の立場を取ったことで、一部保守層から支持を集めているとみられ、尹氏が弾劾訴追されてからの数か月間、次期大統領選候補に関する世論調査で、保守系候補の中では支持率1位を維持している。しかし、李氏には2桁の差をつけられている。
そのほか、大統領選には、南東部のキョンサンナムド(慶尚南道)の元知事で、閣僚経験もあるキム・ドゥグァン(金斗官)元国会議員や、ソウル近郊のキョンギド(京畿道)のキム・ドンヨン知事が出馬を表明した。「国民の力」からは、アン・チョルス議員が4度目の大統領選挑戦を表明したほか、これまでに複数が出馬に意欲を示している。ハン・ドンフン(韓東勲)前代表や、同党所属のオ・セフン(呉世勲)ソウル市長も近く出馬を表明するものとみられる。聯合ニュースは「党内候補を選ぶ予備選に参加する候補者が二桁に達する可能性もある」と伝えている。
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