イ・ボムス=20日、ソウル(聯合ニュース)
イ・ボムス=20日、ソウル(聯合ニュース)
鳥は片翼だけでは飛べない、両翼を広げてこそ飛ぶことができる。俳優イ・ボムスは、良い俳優になるための必要条件をこう言い換えた。「商業性と作品性の間でバランス感覚を維持することが必要だ」。時が訪れればいわゆる「芸術映画」にも出演したいというイ・ボムスに、ソウル・三清洞のカフェで会った。

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 最新作は大衆指向が強いスポーツ映画『キングコングを持ち上げる』だ。重量挙げのスター選手が負傷のため失意に陥るも、地方の中学校の重量挙げ部で子どもたちに教えるようになり、指導者として生まれ変わるというストーリー。イ・ボムスはその重量挙げコーチ、イ・チボンを演じた。
 「脚本を読んだとき、目の前が明るくなりました。ストーリーが与える響きが良かった。その上、重量挙げ選手はまだ一度も挑戦したことのないキャラクター。やってみたいという思いがわきました」。

 しかし、思いの外、その挑戦は容易ではなかった。重量挙げ選手に扮(ふん)するシーンはいくらもなかったが、そのために1か月間、厳しい練習に耐えなければならなかった。1日8時間、午前中はウエートトレーニングに励み、午後には体育大学でバーベルを上げるトレーニングを受けた。「劇中で100回持ち上げようが、1回しか持ち上げなかろうが、選手としてのフォームが出来ていなければならない。ユニフォームを着ていなくても重量挙げ選手らしくなければ。選手らしい情熱が感じられなければならないんです」。

 トレーニングで腰を傷めもしたが、今回の作品でたくさんの新人クラスの俳優と呼吸を合わせたことは、自身の役者人生で重要なターニングポイントになったと語る。「映画の経験がほとんどない子たちとの共演は見通しがつかないものでしたが、食事の時間でさえ彼らと演技の話を続けました。後姿しか映っていないときでも、皆が気を楽に演技できるよう全力で演じました。何かを教えると、まるでスポンジのように吸収していくんです。わたしも成長したし、彼らも成長したと思います。とても大切な経験でした」。

 この秋から高麗大学言論大学院に進み、映像理論を学ぶ。理論的な部分を学びたいと、1年前から準備を始めた。元々、知的欲求が旺盛なほうだ。大学時代にはギリシャ悲劇から現代叙事劇まで、演じなかったジャンルはない。出演した演劇作品は実に38本。いわく、「中央大学演劇映画科史上、空前絶後の最多出演記録」だ。
 「学生時代から学習欲が強く、たくさんの演劇作品に出演したことで、理論を渇望するようになりました。社会に出てからも同様で、映画に出るほど理論を学ばなければと思うようになって。映画は監督の芸術ですが、そのなかにも俳優の役割は明らかに存在するはずだと思ったんです」。

 自分の人生哲学がにじみ出るような演技がしたい、そのためには実践だけでなく、理論も知らなければならないと判断した。もちろん、数冊の本を読んだからと、真の演技ができるものではないことはよく分かっている。「人生に対する愛情のこもった真摯(しんし)な苦悩が演技ににじみ出るとき、それだけ感情を伝えることができるのだと思います。俳優は真を見せなければいけないのです」。

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