ホ・ジノ監督の新作映画『きみに微笑む雨』でチョン・ウソンが演じたパク・ドンハは、スーツを着た平凡なサラリーマンだ。詩人になることを夢見て、留学時代には思いを寄せた女性もいたが、就職してサラリーマンとなっては夢を忘れ、別の女性と付き合ったりする、どこにでもいる一般人だ。
チョン・ウソンがこれまで出演してきたのは、劇的だったり、非現実的だったりする恋物語だった。今回のような日常的な恋は初めて。穏やかな感情を伝える自信がなく、これまではホ監督の作品を断ってきたが、「最近一番よく考えるのは、日常の美しさ」だという。初試写会を終えたチョン・ウソンに、ソウル市内のカフェで会った。作品を世に出す心境を尋ねると、「感心している」と表現した。
「僕には前例のないことでしたから。せりふは英語で、相手役は中国人女優。1か月という短期間の中国での撮影と、懸念材料が多かった。結果物がそんな懸念を覆してくれたので、感心しているんです」
海外ロケの苦労話というと、環境の厳しさが挙がるケースが多い。ホ監督は、「家を出れば苦労はつきもの」と中国撮影の苦労を語ったが、チョン・ウソンは「ホ監督に会えば苦労はつきもの」という言葉で返した。ホ監督の作業スタイルを冗談交じりに皮肉って表現したものだと話した。
「ホ監督は現場で考え込むんです。僕はせっかちではないけれど、決断は早いほう。カット数が多いから早く進めようという作業に慣れているので、そこがもどかしくて」
ホ監督が1日と悩んでいると、「とりあえず撮りましょう」とチョン・ウソンが急かしたというが、「それがホ監督のスタイルで、だからホ監督印のメロドラマが生まれるんですよ」
演じたドンハは、米国留学中の旧友のメイ(カオ・ユアンユアン)と出張先の中国で再会し、恋に落ちる。2人は英語でコミュニケーションを取る。ドンハの英語力をどの程度にするかについて、監督と多く話し合ったという。ホ監督は「やや下手な英語」を求めたが、チョン・ウソンは「上手な英語」を駆使した。自分がおかしな英語を話していたら、観客は演技よりも英語に気を取られてしまうと考えたためだ。映画を楽しんでもらう妨げとなる要素をなくしたかった。「僕にとっては重要な問題だった」と語る。
観客はチョン・ウソンという俳優を評価する時、演技よりも目に見える外的なものを優先するのだと、チョン・ウソンは指摘する。そして、それが観客とコミュニケーションする上で重要なポイントだという。
「(観客のそうした評価に)全面的に影響されるわけではないけれど、意識せざるを得ません。そうして認められてきた俳優でもありますし」
映画『トンケの蒼い空』で演じた格好悪い役も楽しかったが、観客はそういうチョン・ウソンの姿を受け入れる準備ができていなかった。この作品以降、対象を認識するようになったという。観客の見るポイントに合わせたアプローチが必要だということに気付かされた。
「自分がやりたいことだけやるのはコミュニケーションではないでしょう。自分の話ばかりではだめ、聞く人のことを考えなければね」
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