李吉順代表=(聯合ニュース)
李吉順代表=(聯合ニュース)
【ソウル21日聯合ニュース】空気清浄機メーカー「エアビタ(AIRVITA)」 の李吉順(イ・ギルスン)代表は、韓国の数少ない女性発明家の1人だ。手ごろな値段と維持費で一年中快適な生活を可能にする小型空気清浄機を開発し、国内外から注目されている。
 開発のきっかけは、生まれて間もない隣人の子どもだった。「赤ちゃんは3か月も風邪を引いている状態でした。隣人の自宅は地下1階だったため湿気が多く、かびのにおいでいっぱいでした」と、李代表。隣人宅に空気清浄機があれば、赤ちゃんにそんな思いをさせなくて済むのに、と思ったという。
 そうした折に、親せきのいる日本を訪れた李代表は、日本ではほとんどの家に空気清浄機があると聞き、衝撃を受けた。当時の韓国では、空気清浄機はまだ家電のカテゴリにも入っておらず、大卒初任給が48万ウォン(約4万円)、空気清浄機価格は300~400万ウォンだった。日本から戻る航空機の中で、李代表は 「わたしが作ってみようじゃないか」と決心した。
 専門知識の必要な電化製品を、理工系出身でもない普通の主婦が開発することは、無謀な挑戦に思われた。常に工具を持ち歩き、昼夜を問わず、テストと研究を重ねた。何の負担もなく始めたことだが、投資金が増えるにつれ「本当に命がけで取り組んだ」と、李代表は振り返る。とはいえ、1度も失敗すると思ったことはなかった。10年余りの長い歳月を経て完成させた小型空気清浄機の性能は抜群だった。効率的なマイナスイオン発生で特許を取得し、スイスのジュネーブ国際発明展では金賞を受賞した。
 しかし、無名の中小企業の製品に、国内市場の反応はあまりにも冷たく、開発の壁を乗り超えてすぐ、今度はマーケティングの壁にぶつかった。そこで李代表は、海外に突破口を見出すことにする。米国や日本など先進国で認証を獲得し、世界展示会に参加し、広報に力を入れた。
 努力の甲斐あってか、ドイツの有力テレビ通販会社の副社長に技術力を認められ、同国市場への進出が決まった。アレルギー性鼻炎の副社長が効果を実感し、すぐに担当者に製品を販売するよう指示したのだという。エアビタは放送から1時間余りで、1万6000台を売り上げた。その後は韓国内でも「ラブコール」が続き、優れた発明品に贈られる韓国のノーベル賞「蒋英実賞」や、大統領表彰も受賞した。
 世界の空気清浄機市場は毎年成長しており、サムスン電子や日本のシャープなどグローバル企業が続々と参入している。いわば「エアビタはグローバル企業のライバル会社」だと、李代表は満足げな笑顔を見せる。
 たった1つの商品で8年を歩んできた。優れた技術力があるからこそ可能だったことだが、めまぐるしく変化する市場では、技術力は基本、デザインとアイデアが重要視されることを実感している。 従来の製品よりデザインを強化した 「S-エアビタ」や自動車用の「カービタ」を新たに開発したのも、こうした理由からだ。
 ことしからはブランドマーケティングに注力し、販売実績を上げていく考えだ。これからは発明家でも社長でもない、営業社員として全世界を駆け回る予定だという李代表。だれも信じてもらえずともエアビタを誕生させたように、同製品をグローバルブランドに成長させるため、世界を舞台に走り続ける。

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